防災のための異文野融合研究
本研究の概要
MSIP Labでは、2016年より河川を自律的に制御する新技術の開発を目的とする異分野融合の研究プロジェクトであるARCE(Autonomous River Control Engineering)を開始しました。異分野融合の研究体制を活かし、各分野のエキスパートの知見を取り入れた最先端の研究を目的とします。
以下ではMSIP Lab 独自のプロジェクトである
- 河床と地盤の変動メカニズムの解明と予測に関する研究
- 河川の蛇行のサイバーフィジカルシステム(CPS)による制御の研究
- 河川のグラフ構造を利用した大規模水位分布予測モデルの開発
を紹介します。
本研究成果は,以下の科研費、助成金の支援を受けています。
- データ駆動による河道網水位の一体制御への挑戦:有向グラフ構造上の動力学モデリング 代表:村松正吾、科研費挑戦的研究(開拓))
- 動的システムモデリングのための局所構造化ユニタリネットワークと接空間学習(代表:村松正吾、科研費基盤研究(A))
- 高次元信号復元のための構造化畳み込みネットワーク(代表:村松正吾、科研費基盤研究(B))
- 流路健全性の保全・回復を目的とするデータ駆動型の河道能動制御法(代表:村松正吾、科研費挑戦的研究(萌芽))
- 自然法則に基づく安定性河道とデータ駆動型の河道の予知保全法による河川の多重性向上(代表:安田浩保 、科研費基盤的研究(A))
- Xバンドレーダとデータ駆動の融合による高分解能かつ多元的な洪水モニタリングの創出(代表:安田浩保 、科研費挑戦的研究(開拓))
河床や地盤の変動メカニズムの解明と予測に関する研究
計測技術の発展により多様かつ膨大な信号が取得可能とりました。同時に,複雑な動的システムの理解と予測,制御への要求が高まっています。この要求に応えるためには,対象となる物理現象を的確に表現できるモデルが必要となります。本研究では,フィルタバンク理論を活用した,データ駆動による河床や地盤の変動の時間発展式の導出の研究を行っています。
研究成果
国際会議
- Yuhei Kaneko, Shogo Muramatsu, Hiroyasu Yasuda, Kiyoshi Hayasaka, Yu Otake, Shunsuke Ono, Masahiro Yukawa: Convolutional-Sparse-Coded Dynamic Mode Decompsition and Its Application to River State Estimation, Proc. of 2019 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), pp.1872-1876, May 2019
- Eisuke Kobayashi, Hiroyasu Yasuda, Kiyoshi Hayasaka, Yu Otake, Shunsuke Ono, Shogo Muramatsu: Multi-resolution Convolutional Dictionary Learning for Riverbed Dynamics Modeling, Proc. of 2023 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP) , June 2023
- C. Zhang, E. Kobayashi, D. Moteki, H. Yasuda, K. Hayasaka, S. Muramatsu: Performance Evaluation of MR-CSC-DMD in River Model Experiment with Groynes, Proc. of ITC-CSCC2023, June 2023
国内学会
- 伊郷恭平,村松正吾,安田浩保,早坂圭司(新潟大)スパース表現による河床状態推定の検討,電子情報通信学会信越支部大会、2017年10月7日
- 安康,村松 正吾,安田 浩保,早坂 圭司:河床状態推定のための水面観測モデルの検討,電気学会東京支部新潟支所大会,新潟,2017年11月11日
- 伊郷恭平・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大)・ジーン チョン(NII), 動的モード分解による河川データ分析,電子情報通信学会信号処理研究会,拓大文京キャンパス,2018年8月
- 金子侑平・安田浩保・早坂圭司・村松正吾(新潟大),動的モード分解による河川状態のデータ駆動モデリング,電子情報通信学会ソサイエティ大会,金沢大学,2018年9月
- 村松正吾, 安田浩保, 早坂圭司, 大竹雄, 小野峻佑, 湯川正裕, 畳込みスパース符号化を利用した拡張動的モード分解, 第33回信号処理シンポジウム,東京電機大学,2018年11月6-8日
- 金子 侑平,村松 正吾,安田 浩保,早坂 圭司,大竹 雄(新潟大),小野 峻佑(東京工業大学),湯川 正裕(慶應義塾大学),波動現象を考慮した畳み込みスパース符号化動的モード分解による河床状態推定,第34回信号処理シンポジウム,とりぎん文化会館,2019年11月
- 新井裕介・金子侑平・村松正吾・安田浩保・早坂圭司・大竹 雄(新潟大):[ポスター講演]水制の模型実験による畳み込みスパース符号化動的モード分解の性能評価,電子情報通信学会信号処理研究会,沖縄,2020年3月(COVID-19により中止)
- Godage YASAS, Shogo MURAMATSU: Locally-Structured Unitary Network to Capture Tangent Spaces of Manifold,信学技報, vol. 122, no. 165, SIP2022-75, pp. 129-133, 2022年8月.
- 小林 栄裕,村松 正吾,安田浩 保,早坂 圭司:畳み込みスパース符号化動的モード分解の多重解像度化とその河床状態推定への応用,信学技報, vol. 122, no. 165, SIP2022-54, pp. 25-30, 2022年8月.
- 岡本充生・大原由暉・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大):全変動正則化によるマイクロ波レーダ河川観測画像復元,映情学技報, vol. 47, no. 20, ME2023-62, pp. 1-4, 2023年7月.
河川の蛇行のサイバーフィジカルシステム(CPS)による制御の研究
大規模な河川災害により人命と社会資産の損失が繰り返されています。発災時の避難経路の確保と発災後の早期復興のためにも交通網など重要インフラの被害を最小化したいと考えています。そこで、流路健全性の保全と回復のための河道能動制御法を提案します。情報学,河川工学,地盤工学,物理学の異分野融合研究体制で,河川災害予防のためのサイバー・フィジカル・システム(CPS)を創出します。センサー群による情報収集,計算機によるシミュレーション,アクチュエータ群による能動的水制のプロトタイプ・システムを構築しています。
研究成果
国際会議
- Weihang Liao, Gene Cheung, Shogo Muramatsu, Hiroyasu Yasuda, Kiyoshi Hayasaka, Graph Learning & Fast Transform Coding of 3D River Data, Proc. of APSIPA Annual Summit and Conf.,pp.1313-1317, Nov. 2018
- Dongqi Liu, Yutaka Naito, Chen Zhang, Shogo Muramatsu, Hiroyasu Yasuda, Kiyoshi Hayasaka and Yu Otake: River Flow Path Control with Reinforcement Learning, Proc. of 2021 IEEE International Conference on Autonomous Systems (ICAS), pp.212-216, Aug. 2021
- Yuki TAKAHASHI, Shogo MURAMATSU, Hiroyasu YASUDA, Kiyoshi HAYASAKA, Yu OTAKE: Flow-path Fitting from Images with Fourier Basis for River Health Assessment, Proc. of 2022 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP), Bordeaux, Oct. 2022
国内学会
- 内藤勇鷹・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大):河川流路変動の解明と制御のためのサイバーフィジカルプロトタイプシステム構築,映像情報メディア学会メディア工学研究会(サマーセミナー2020),オンライン,2020年9月
- 井上大輝・Zhang Chen・Liu Dongqi・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大),河道能動制御CPSのプロトタイプ構築のための流路健全性指標の検討 ,映像情報メディア学会メディア工学研究会(サマーセミナー2021),ME2021-78 ,オンライン,2021年9月
- ZHANG CHEN・内藤 勇鷹・村松 正吾・安田 浩保・早坂 圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大):河道能動制御システムのプロトタイプ構築, 2021年電子情報通信学会総合大会,オンライン,2021年3月
- 高橋 勇希・安田 浩保・早坂 圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大)・村松正吾(新潟大): 河川流路制御CPSのためのフーリエ基底による河川健全性評価法 2021年電子情報通信学会総合大会,オンライン,2022年3月
- 二村碩哉・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大):河道能動制御サイバーフィジカルシステムのためのプラントモデルの検討, 映情学技報, vol. 47, no. 20, ME2023-63, pp. 5-8, 2023年7月.
- 張 晨・高橋勇希・茂木大知・安田浩保・早坂圭司・村松正吾(新潟大):河川流路変動メカニズム解明のための水制再配置システムの構築,電子情報通信学会クラウドネットワークロボット研究会,札幌市,2023年7月
河川のグラフ構造を利用した大規模水位分布予測モデルの開発
本研究では,有向グラフ信号処理の新体系を確立し,河川の水位分布を管理するために必要な有向グラフ上の動力学モデリング手法を創出します。国交省は,気候変動による水災害に備えるため流域治水による対策を急ぎ,河道外への放水や止水・迂回制御の体系化を求めています。現状は,水系全体を制御対象とした状態空間モデルは存在せず,降雨に対する水位の制御の可能性を理論的に議論できない状況です。そこで,不規則ネットワーク上の物理量をグラフ構造上の信号とみなし,その予測と制御に必要な時間発展式の導出を実施しています。
研究成果
国際会議
- Yusuke Arai, Shogo Muramatsu, Hiroyasu Yasuda, Kiyoshi Hayasaka, Yu Otake: Sparse-Coded Dynamic Mode Decomposition on Graph for Prediction of River Water Level Distribution, Proc. of 2021 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP) , DOI: 10.1109/ICASSP39728.2021.9414533, June 2021
- Hotaka Kitamura, Hiroyasu Yasuda, Yuichi Tanaka, Shogo Muramatsu: Realization of Digraph Filters via Augmented GFT, Proc. of 2023 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP), Oct. 2023, to appear
国内学会
- 新井裕介・村松正吾・安田浩保・早坂圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大):グラフ動的モード分解による多地点河川水位の解析と予測,第35回信号処理シンポジウム,2020年11月
- 北村 帆高・新井 裕介・村松 正吾・安田 浩保・早坂 圭司(新潟大)・大竹 雄(東北大):標高差を考慮したグラフ動的モード分解による河川水位分布予測, 2022年電子情報通信学会総合大会,オンライン,2022年3月
- 村松 正吾,北村 帆高(新潟大),田中 雄一 (大阪大):有向グラフ信号処理のためのグラフフーリエ変換の一般化,第37回信号処理シンポジウム,新潟市,2022年11月
- 北村 帆高,村松 正吾,安田 浩保,早坂 圭司( 新潟大):制御付きグラフ動的モード分解による河川水位分布予測,第37回信号処理シンポジウム,新潟市,2022年11月
- 内藤 翼・北村 帆高・村松 正吾・安田 浩保(新潟大):データ駆動型動力学モデリングによる河川水位時系列データ解析の検討, 2023年電子情報通信学会総合大会,芝浦工業大学大宮キャンパス,2023年3月
- 村松正吾・北村帆高・安田浩保(新潟大)・田中雄一(阪大) :有向グラフ信号に対する実フィルタ設計に関する検討,信学技報, vol. 122, no. 388, SIP2022-168, pp. 282-287, 2023年2月