
有機材料を用いたエレクトロニクスの基礎的な研究は、1970年代から長く行われてきましたが、最近になって液晶ディスプレイや有機ELなど身近な所での応用が進んできており、益々活発な研究分野となってきています。有機デバイスは、これまでのシリコン系の無機デバイスとはまた違う利点を持っており、分子を組み立てていくことによりデバイス化を行うため、曲げ伸ばしのできるフレキシブル化、印刷技術によるデバイス化もでき、さまざまな可能性を秘めています。
我々は特に、金属薄膜表面近傍に励起する"表面プラズモン"を用いて、有機薄膜・デバイスの高感度評価技術の開発を行っています。また、表面プラズモンの励起により大きく強められた電界を利用した、次世代高効率有機デバイスの基礎・応用研究を推進しています。これらの具体的な応用例としては、有機太陽電池、有機FET、バイオセンサーなど多岐に渡ります。

真空装置を用いた有機デバイスの作製

透過型表面プラズモン共鳴バイオセンサーの測定系

1911年にオランダのKamerlingh Onnesにより、ある物質を冷却していくことにより電気抵抗がゼロになる超伝導現象が発見されて以来、超伝導に関する技術は目覚ましく発展を遂げています。現在、超伝導技術が使われている機器としてはMRIなどの医療機器、リニアモーターカーなどの輸送機器などがあります。
超伝導は電気抵抗がゼロになる現象に加え、ピン止め力による磁束の保持、ジョセフソン効果など超伝導特有の特殊な現象が存在し、“超伝導でなければできないこと”を研究することができる分野といえます。また、工学的な立場で考えると『電流密度が高い』、言い換えると狭いところにたくさん電気を流すことができる特徴があり、一般的に使われている銅線の10倍以上の電気を流すことが可能です。この特徴を生かし、電力ケーブルや発電機などの電力設備を超伝導化することが期待されています。しかし、ここで大きな問題となるのがほとんどの電力機器は交流で使用されており、この場合には交流損失と呼ばれる損失が生じてしまうことが問題となっています。
我々の研究室では、高温超伝導と呼ばれる液体窒素温度(−196℃)でも超伝導状態を維持できる超伝導体を中心に、交流損失特性の評価・低減に関する研究を行っています。交流損失は非常に小さい損失なので測定することは非常に難しく、テクニックとセンスが必要な研究です。超伝導化による様々な技術革新に向けた研究を行うことにより、電力分野のみならず医療、産業、輸送、環境、通信分野など様々な分野への応用が期待されています。

ピン止め効果による永久磁石の浮上の様子

300Aが通電できる高温超伝導線と銅線の断面の比較