
過去に発生した大地震では、建築物のある層が完全に崩壊する層崩壊の被害が数多く生じました。それら層崩壊した建物の大部分は古い耐震設計基準により設計されており、現在でも古い建物は数多く存在しているため、今後大地震が発生した際に同様の被害が生じる可能性が大きいといえます。層崩壊は人命に直接危害を及ぼす破壊形式であるため、将来の大地震に対してこのような建物の崩壊を耐震補強によって防止することが必要であり、そのためには、柱が被害を受けて縦方向に崩壊する際の性状や建物の崩壊過程を把握しておくことが非常に重要です。
そこで、建築物をより耐震性の高いものにするために、1) 構造実験による部材(柱など)の崩壊性状の把握、2) 計算機を用いた数値解析による建物の地震時挙動の予測、のふたつの面から研究しています。このように、将来の地震被害を軽減することを目指して様々な課題に取り組んでいます。

鉄筋コンクリート試験体の製作

柱の崩壊状況

コンクリート構造物は、材料・配合の組合せが多種多様であり、さらには設置される環境条件の影響を受けるため、強度・耐久性といったコンクリートの性能は大きく変化します。これらコンクリートの性能はセメント系材料と水の反応によって生成する水和物の性質と密接な関係があります。そのため、コンクリートを水和物の集合体と捉えれば、水和物の種類と量によってコンクリートの性能を評価することが可能となります。
そこで、私はこの水和物に着目し、セメントが生成する水和物の種類と量を経時的に予測することができる水和モデルの構築を目指しています。
この水和モデルと水和物個々の性質とを結びつけることで、構造物の設置から長期にわたるコンクリートの性能を従来よりも効率的かつ精度よく予測することが可能となります。このモデルを構築するためには多くの難題を乗り越えなければなりませんがモデル化の実現に向け日々の研究に取り組んでいます。

X線回折による分析の様子

水和物の電子顕微鏡写真