
化学技術は,人類の幸福に役立つ多くの材料や製品を環境や資源に配慮して生産するために不可欠です。資源やエネルギーを有効に使う,高い機能を持つ材料を開発する,環境汚染を防止するなど広い分野で化学技術が使われています。
私たちの研究室では廃水処理技術を研究しています。廃水には染料のように処理しにくいものも含まれています。オゾンを使って処理困難な汚濁物質を効果的に酸化分解するマイクロリアクターを開発しています。オゾンガスと廃水を流す流路の高さを数百マイクロメートルにすることで染料を数分で脱色分解することができます。また,植物や微生物を利用した廃水処理方法も研究しています。人工湿地はその名の通り人工的に作られた廃水処理用の湿地です。人工湿地は欧米やアジアなど広い地域で,家庭排水だけでなく,畜産廃水や駐車場に降った雨水の処理などにも応用されています。人工湿地は下水処理施設や浄化槽に比べて広い面積が必要ですが,装置を運転するためのエネルギーをほとんど必要としません。処理条件を適切に設定すると染料を含む廃水でも人工湿地で十分に処理することができます。最近では,シリコンチューブを使って湿地内部の微生物に酸素を供給して廃水処理性能を高める方法も検討しています。また,公共下水道や工場廃水処理施設では排水を処理する際に大量の汚泥が発生しますが,その処理方法も研究しています。
学生は共同研究者でもあり,得られた研究成果を学生とともに国際的に広く発表しています。海外で開催された国際会議で発表した学生もいます。