社会基盤工学プログラム[新潟大学工学部 力学分野]

研究プロジェクト
Research Project

応用力学分野Applied Mechanics

応用力学分野では、土木工学に関連するさまざまな力学挙動を数理モデルで表現し、対象とする力学現象やそのメカニズムの解明に関する研究に取り組んでいます。
構造物の最適形状創成では、所定の荷重や音源の下で所定位置での発生変位や観測音圧を最小化させる構造物の形状をコンピュータシミュレーションで自動的に生成する方法を提案しています。また、応用力学の知見を活かした鉄道力学の諸現象の研究では、レールや軌道の座屈解析やレール軸力測定、車輪・軌道系の連成振動解析やバラスト道床沈下シミュレーションなど、鉄道の軌道設計・管理の実務において重視される諸現象を応用力学や計算力学的なアプローチから考察し、鉄道工学における最先端の知見を発信し続けています。
これ以外にも、積雪沈降現象に伴う構造物への作用力評価や構造物の変形解析、構造物と地盤との連成系の波動応答解析や鋼製組立網の変形解析、岩盤の発破シミュレーションや境界要素解析の効率化など、最先端の研究課題に取り組んでいます。

近年の研究テーマ

(1) レール軸力など鉄道軌道における力学状態の推定手法の開発
(2) 工事や列車走行に伴う振動の予測と低減策に関する研究
(3) バラスト道床沈下量の高精度・高効率定量予測手法の実用化に関する研究 ほか多数

研究室HP:http://applmech.eng.niigata-u.ac.jp/index.html
教員:教授:阿部和久、教授:紅露一寛
居室:工学部C2棟C2-206(阿部)、C2-205(紅露)、C2-201(学生研究室)、C3棟(実験室)

数理モデルを用いて様々な力学現象の解明に取り組む

研究のキーワードが「力学」であることもあって、力学の知見を活用した研究テーマが多岐にわたっていることは、私たちの研究室の特色の一つです。例えば、鉄道の力学諸現象の研究や、周期構造物内の波動伝播、岩盤の発破シミュレーション、積雪沈降と構造物変形の連成問題などに取り組んでいます。

レール軸力など鉄道軌道における力学状態の推定手法の開発

レールに太陽光が当ると、レールは温度上昇を受け、熱膨張しようとします。しかし、継ぎ目の無いロングレールはまくらぎに締結されているので、伸縮が拘束されます。その結果、レール内には長手方向に押す力(圧縮軸力)が発生します。この力が大きくなると、図(上)の様に軌道が蛇行するように変形してしまいます。「座屈」(張り出し)と呼ばれるこの現象を未然に防ぐためには、レール軸力や張り出しに対する抵抗力を測り、軌道を適切な状態に保つ必要がありますが、未だに効率的な測定方法がありません。
近年は営業車の走行時に、車両側から軌道形状を測定可能となってきています。レール軸力が変化すると軌道形状がわずかに変化しますので、この関係を利用すれば、測定で得た変化から逆に軸力が求められそうです。例えば「ばねばかり」は、荷重が作用した結果ばねが伸びるという関係を利用して、ばねの伸び(結果)から逆に荷重(原因)を求めています。そのためには、荷重とばねの伸びとの関係(ばね定数)が必要ですが、軌道の場合も、このばね定数に相当する値を理論的に導出できれば、軌道形状の変化から軸力を求めることが可能となります。図(下)は、数値シミュレーションで求めた軌道形状の変化から、レール軸力を求めた結果です。設定軸力(正解)と推定値とは良い一致を示していて、軌道形状の測定データからの軸力推定が原理的に可能であることが確認できます。現在、鉄道事業者と共同で研究を進めています。

バラスト道床沈下量の高精度・高効率予測手法の実用化に関する研究

国内外の鉄道の多くには、列車荷重の分散・衝撃力の作用の緩和・振動低減を目的として、レールとまくらぎの下にバラスト道床として25cm程度の層厚で砕石を敷設します。バラスト道床には、非常に多数回の列車通過の結果「道床沈下」と呼ばれる残留変位が発生します。本研究室では、弾塑性有限要素法を用いた道床沈下量の高精度・高効率予測手法の開発に取り組んでいます。
近年では、軌道振動解析をうまく組み合わせることで、列車通過時に衝撃応答が発生するレール継目部でのバラスト道床沈下量の定量予測を実現することができました。




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セメント・コンクリート分野Cement Concrete

本研究室は、コンクリートを生成水和物の集合体として捉え、個々の生成物の性質からコンクリートの各種性能を評価する一連の手法の構築に取り組んでいます。これらの研究により、要求される性能を満足するコンクリートを造るための適切な材料・配合設計が可能となり、産業副産物のコンクリートへの利用や構造物の維持管理など、コンクリートに関連する多くの問題解決につながります。また、放射性廃棄物処理施設に代表されるような、何千年後であっても性能を保持することができる超高耐久コンクリートの設計や、産業副産物を利用した“付加価値の高い”セメント・コンクリート材料の設計手法の構築にも取り組んでおり、様々な分析機器・分析手法を用いて“物理化学的知見”から現象の解明を行っています。

研究室HP:http://concrete.eng.niigata-u.ac.jp/
教員:教授 佐伯竜彦(コンクリート工学)
准教授:斎藤豪(材料化学、セメント・コンクリート化学、分析化学)
居室:工学部C2棟 3階 C2-305、306

薄板供試体を用いたコンクリート構造物の劣化調査および維持管理手法の提案

北陸地方において問題となっているコンクリート構造物の劣化原因の一つに塩害があります。構造物の劣化要因には、コンクリート自体の性能と環境条件があります。性能に関しては多くの研究がなされていますが、環境条件についてはあまり研究がなされていません。そこで本研究室では、薄板供試体というものを用いて研究を行っております。薄板供試体を用いた環境条件の評価方法は、現在用いられている測定方法と異なり、短期間で部材ごとに評価が可能である等の利点があります。この測定方法が確立されれば、LCCの削減が可能になり、社会的意義が大きな研究です。

セメント水和物の結晶構造に着目した新材料の設計および劣化機構の解明

セメントは水と反応することで様々な化合物を生成し、硬化します。本研究室ではセメントの反応物である、カルシウムシリケート水和物やカルシウムアルミネート水和物の結晶構造や、それらが集合した凝集体構造に着目し、生成する水和物を“制御”することで、再生可能な新しいセメントの設計、セメント系新材料の開発、超高耐久コンクリートの設計およびコンクリートの劣化現象の解明を行っています。

長期供用された歴史的コンクリート構造物の化学分析

コンクリート構造物の長期供用のための基礎資料を得ることでコンクリート構造物の維持管理や設計に役立てることを第一の研究目的としています。具体的には、大正、昭和初期に建設され、長期間供用されたコンクリートの分析をセメント水和物に着目して実施しています。また、コンクリートの分析を行う際に骨材の影響を排除するために、重液を加えて骨材とセメントペーストを遠心分離器によって分離する重液分離の手法を立案しました。この手法により水和物に及ぼす影響を定量化する研究を行っています。




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水工学分野Hydraulic, Coastal and River Engineering

地球は水の惑星と呼ばれるほどに豊かな水をたたえ、水は誰にとっても身近な物質の一つです。人類は、日本のような湿潤気候の国ではありあまる水との折り合いに悩み、乾燥気候の国ではわずかな水を如何に逃さないかに苦慮してきました。水工学では、台風や線状降水帯などのさまざまな降水現象、河川の普段と洪水の流れ、風波や津波による沿岸部での波動現象、地下水の流れなどを学問対象にします。水は人をはじめとする生物にとって不可欠な物質であるうえ、その運動を日常生活でしばしば目にしますが、現在においてもなお科学的に説明できない現象がたくさん残っています。
近年のICT技術の目覚ましい発展は、地球上の様々な水の運動を克明に描き出すための計測技術とコンピュータシミュレーションの両方の技術水準の引き上げに大きく寄与し、未解明の現象の理解が急速に深まってきています。水工学の命題は、あらゆる形態の水の運動の理解に基づいた快適かつ安全な人々の暮らしの創出への貢献です。例えば、発生が間近とされる南海トラフ大地震に伴う津波の減災を考えたり、茨城県常総市を襲った鬼怒川の大水害の原因究明や再発防止策を提案したり、治水ばかりを優先したために劣化が著しくなった河川の自然環境の復元技術を開発したりします。また、水の運動は地形形成の主要因の一つとなるため、河川や海岸の地形ばかりか火星などの他の惑星における地形の形成過程の解明にも水工学の貢献が期待されています。
今、水工学は先端科学技術がもたす質的転換の時期を迎え、人類の永続のために解決が不可欠となる、自然災害の予防と減災、自然環境の持続的維持を実現する基盤学問として強い脚光を浴びています。

研究室HP:http://rde.nhdr.niigata-u.ac.jp/lab/
教員:准教授 安田 浩保(水理学・河川工学・コンピュータサイエンス・自然災害科学)
研究室・実験室:環境エネルギー研究系 213、204、205

安心・安全な河川技術の確立

水は、全ての生命の維持に不可欠なものです。一方で、極端な気象現象が生じやすい近年では日本のような多雨地域では、水は、河川の周辺では猛威を振るい、生命の存続さえも脅かします。水工学の社会的使命の一つは、自然災害の緩和技術の提供です。しかし、河川の物理機構の多くは依然として未解明のため、現状では予測と予防という能動的な対策が講じられない大きな課題が残っています。水工学研究室では、安心・安全な河川技術の確立に向け、従来からの物理学と様々な技術分野に革新をもたらしている情報科学を融合した最先端の研究方法を用い、不明なことが多い河川物理を解明する基礎研究と、それを応用して工学課題を解決する実用研究を並行して実施しています。

(1)蛇行などの周期形状の形成機構の解明(自己組織化現象、データ駆動科学)

河川には人を魅了する蛇行や水底の河床波等の周期形状が形成されます。これらの形成機構には20世紀初頭から科学的関心が集まってきました。しかし、未だにそれらの詳しい物理機構は謎のままです。その主因として、流水中の水底面の物理の測定手法の未確立が続いてきたことが挙げられます。水工学研究室では、流水を駆動源とした水底面の土砂輸送がこのような周期形状の形状要因と推測されることに注目し、流水中かつ従来法より10万倍も高分解能な河川物理の計測法(ST:Stream Tomography)の開発を行い、不明な物理の解明に挑戦しています。STにより取得された高分解能データは、河川物理の解明における初めてのデータ駆動科学による研究を可能とし、不明な河川物理を解明する画期的な研究成果が相次いで得られています。

(2)壊れにくい柔靱な河道および河川構造物の設計法の開発(自然模倣型工法)

気候変動によって想定を上回る洪水が頻発しています。このような洪水が発生すると、右図の2011年の音更川(北海道)での被災事例のように直線的な流路から突如蛇行が発生し、堤防の浸食、橋梁や河川と併走する道路の流失に至ります。このような顕著な流路変動は、国内の人口居住地近傍の約10万キロの流路の半数近くで発生する可能性があります。しかし、現在の河川工学では流路変動の予測と予防はできません。そこで、蛇行の形成機構など普遍的な力学法則に基づくことで、洪水時にも壊れにくい柔靱な河道と河川構造物の設計法の開発に取り組んでいます。開発した技術は、国土交通省の協力を得て、実河川に適用して、その性能実証も行っています。

(3)安全な避難を実現する洪水予測法と監視法の高度化(ビッグデータ、IoT、人工知能)

日本の河川監視は質・量ともに世界最高水準です。しかし、国が定める重要箇所でさえ数km間隔の水位監視のみかつ河川堤防は0.1km程度毎の凹凸があるため、氾濫箇所とその開始時刻の把握は非常に困難です。安全な避難の実現に向け、データ同化を導入した新しい洪水予測法と、IoTと人工知能を融合した革新的な監視システムを開発しています。この研究は、信号処理と素粒子実験物理の研究グループと異分野融合の研究体制を構築して実施していることも大きな特徴です。




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地盤工学分野Geotechnical engineering

毎年のように大規模な自然災害(洪水、地震など)が発生し、都市環境が抱えているリスクの大きさを痛感します。私たちは、自然災害のサイクルよりも早いスピードで便利な都市環境をつくりあげました。利便性だけではない、真に安全安心な都市、持続可能な社会を市民に提供するために、次に何をすべきでしょうか?
自然を相手にする社会基盤施設の設計は、大きな不確実性(あいまいさ)、リスクの中での意思決定問題と捉えることができます。リスクを計量しその種類を知る、めったに起きないことを如何に予測して意思決定するのか、リスクの定量化とその対処が、次の設計基軸になると考えています。
現在の都市は、人間が住むべきではないところまで拡大している可能性があります。新しいものを“つくる”だけでなく、現在ある社会基盤施設に潜むリスクを定量化し、時には名誉ある撤退もすべきかもしれません。
リスクの計量に欠かせないものは“データ”です。近年、洪水や地震などの自然災害や地盤情報が蓄積され、私たちは膨大なデータを手にしています。しかし、そのデータを十分に活用できているとはいいがたい状況にあります。“膨大なデータから何を語らしめることができるのか?”私たちの社会生活に潜むリスクを“見える化”するために、統計学と力学を融合した新しい設計のあり方を研究しています。

近年の研究テーマ

(1)確率論に基づく地盤災害リスクの計量(地震災害、洪水災害)
(2)新潟市域の詳細な地盤応答特性の把握/液状化リスクマップの高度化
(3)データ科学(機械学習など)の地盤工学への応用(情報化施工、データ科学を用いた数値解析のV&V、画像解析に基づく地盤材料特性の判別)
(4)信頼性解析理論に基づく設計基準類の改定支援/偶発荷重に対する設計研究

研究室HP:大竹研究室 https://yu-otake.net/ 保坂研究室  http://geotech.eng.niigata-u.ac.jp/
教員:准教授:大竹雄(設計学・信頼性工学・地盤工学)
助教:保坂吉則(地盤工学)
居室:大学院自然科学研究科 総合研究棟(生命環境系)203、204

データ科学がもたらす「地盤災害予測」の革新

研究室概要:私たちのくらしを支える地盤は、プレートの動きによる内的作用による隆起や沈降と降雨や風化などの外的作用などにより作り上げられた自然堆積物です。従って、その形成過程や地形条件により場所毎に工学的性質が大きく異なります。しかしながら、その材料特性を直接見ることができない点が、コンクリートや鋼などの人工材料の構造物との大きな違いです。従って、地盤構造物設計や地盤にかかわる災害予測には、大きな不確実性(あいまいさ)が存在します。本研究室は、統計学や最新のデータ科学に基づき、限られた調査・観測データを活用して地盤災害のリスクを定量化し、構造物の挙動を精度良く評価・予測・設計するための研究に取り組んでいます。

確率論に基づく地盤災害リスクの計量

毎年のように大規模な自然災害(洪水、地震など)が発生し、都市環境が抱えているリスクの大きさを痛感します。自然を相手にする社会基盤施設の設計は、大きな不確実性(あいまいさ)、リスクの中での意思決定問題と捉えることができます。リスクを計量しその種類を知る。めったに起きないことを如何に予測して意思決定するのか。リスクの定量化とその対処が、次の設計の基軸になると考えています。
例えば、微動(身体に感じない地盤の揺れ)、中規模の災害時に生じた地盤構造物の動きや変状は、大規模な変状や崩壊の予兆と捉えることができるでしょう。これらの情報から地盤の中身を逆推定し、大規模な災害時にどこが危険な状態になりうるか、最新のデータ科学を用いて導き出します。右図は、過去の中規模災害時の変状からの逆解析に基づいて河川堤防の破堤危険度を可視化した例です。

新潟市域の詳細な地盤応答特性の把握/液状化リスクマップの高度化

地震の被害は、マグニチュードや震源からの距離だけでなく、表層地盤の性質が大きく影響します。本研究では、新潟市域において実施された、多数(約3、000本)のボーリングデータ(深度方向に30~150m程度の穴をあける作業)と地形地質の成り立ち(微地形分類情報)を空間統計学に基づいて融合し、新潟市域の3次元地盤情報(地層構成や材料特性)を逆算してモデル化しました。
右図は、この3次元地盤モデルを用いて、地震時の揺れを力学的に計算することで、新潟市域の揺れやすさの空間分布をあぶり出した結果を示しています。今後は、新潟市域で懸念される液状化の可能性なども対象として、新潟市域の地盤応答特性の把握に基づいて液状化リスクマップの高度化を目指しています。




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過去の研究プロジェクト

国土交通省「道路政策の質の向上に資する技術研究開発」採択課題

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