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2022年度 ものづくりプロジェクト製作作品

 新潟大学工学部附属工学力教育センターが主体となり運営している「ものづくりプロジェクト」は、学生がプロジェクトチームを組み、 技術開発プロセスの学習を行う科目で、工学部の共通科目になっています。1~4年生、院生などの多様な学年・様々なプログラムからの参加があるほか、 他学部からの参加もあります。複数年度継続して受講する学生も多数おり、今年度は合計141名(2023年3月時点)の学生が参加し、7プロジェクトに分かれて活動を行いました。

 新型コロナウィルス感染症も、時期によっては落ち着きを見せ、多少の制約はあるものの、年度の後半は、以前とほぼ同様な活動を行うことができました。 全国的なイベントは、オンラインも取り入れつつ、現地での開催が可能となりました。
 工学力教育センターでは、感染者数などの指標をモニタしつつ、活動時間の制限、一度に活動できる人数の制限など、特に年度前半は感染症対策に配慮しつつの活動になりました。 昨年度システム化した、オンラインで活動できる仕組み、座席予約システム、入退出管理などを今年度も継続して行い、なるべく学生の活動の制限を行わなくても良いような環境構築を行いました。 その甲斐あってか、学生個人の感染や、濃厚接触者の指定などはあったものの、クラスター等、多数の感染者を出さずに1年間の活動を終えることができました。

 学生の活動に目を向けると、「NHK学生ロボコン大会」における決勝トーナメント出場、特別賞受賞、「全日本学生フォーミュラ大会」における全種目完遂・自動車技術会会長賞受賞、 「能代宇宙イベント」「種子島ロケットコンテスト」での優勝など、様々な成果を残すことができました。DXを含めたオンライン空間の活動をいち早く活動に取り入れ、 苦労しながらも工夫して活動してきた学生の努力の結果と思います。

 以下に2022年度のプロジェクト活動を紹介します。

ロボコンプロジェクト

 ロボコンプロジェクトは、毎年6月初旬頃に行なわれる「NHK学生ロボコン」優勝を目指して活動をしています。 今年度も、2022年6月12日(日)に大田区総合体育館(東京都)で行われた「NHK学生ロボコン2022」に、新潟大学ロボコンプロジェクト(科学技術研究部)が出場しました。 3年ぶりに有観客での開催となりました。
 2022年の競技課題は、インドの人々が昔から慣れ親しんできた遊び「ラゴリ」という屋外ゲームをモチーフとされました。「ラゴリ」は、2つのチームに分かれて行われます。 一方のチームが「シーカー」、そしてもう一方のチームが「ヒッター」と呼ばれ、シーカーがボールを投げて「ラゴリ」と呼ばれる石の塔を崩すことから始まります。 シーカーが再び石を積み上げる間、ヒッターはボールを相手チームに当てて積み上げを妨害します。
 ロボコンには珍しく、攻守交代制で、参加チームは2台のロボットを製作し、石の塔に見立てた発泡ウレタン製のディスクを崩し、積み上げる動作を90秒以内に行います。 その間、相手のロボットから発射されるボールの妨害から逃げなければなりません。学生ロボコンでは初めて、相手のロボットに向けてボールを発射するというルールが採用され、 実際の試合も、状況に応じてロボットの動きを変化させるという非常に戦略的なものになりました。
 予選リーグでは京都工芸繊維大学との2度対戦し、一勝一敗となったものの、得点差で決勝トーナメント進出(ベスト6)を果たしました。 決勝トーナメントに進出するのは2年連続となります。決勝トーナメントでは今年の優勝校である豊橋技術科学大学に敗れはしたものの、 ディスクを機体の内部に設けられた仕切りに収納し、一気に積むというアイディアが評価され、トヨタ自動車株式会社様より特別賞を頂きました。

 この模様はYouTube(アーカイブ:https://www.youtube.com/watch?v=juYlfcXIgFk&list=RDCMUCHaI7UN2G4BGKv46QnW40Rw) で配信されたほか、7月18日(月)(海の日)午前11時から、NHK総合テレビで放送されました。

■ロボコンチーム(科学技術研究部)ホームページ
■NHKロボコンホームページ
■YouTubeアーカイブ
■チーム紹介動画(YouTube)




学生フォーミュラプロジェクト

 2022年9月6日~10日に静岡県掛川市エコパスタジアムで行われた「学生フォーミュラ日本大会2022」に、学生フォーミュラプロジェクトが出場しました。 動的審査を現地で行うのは、2019年以来3年ぶりとなります。日本全国から54チームが参加しました。
 大会期間中は、加速性能を競う「Acceleration Event」、旋回性能を競う「Skidpad Event(8の字走行)」、コース走行を行いタイムを競う「Autocross Event」、 耐久性が問われる「Endurance Event」が行われます。これらのイベントに参加するためには、製作した車両がルールに則り、 安全に走行できるかを審査される「技術車検」にパスしなければなりません。その他にも、4輪ブレーキ試験やチルト試験、騒音試験等にも合格しなければなりません。
 新潟大学は軽微な修正はあったものの、技術車検やその他の試験に無事合格し、9月8日から行われた各種動的イベントに出場しました。「Acceleration Event」で5.673s、 「Skidpad Event」で6.344s、「Autocross Event」で72.421sとまずまずの結果を残し、最後の動的イベントである「Endurance Event」に出場しました。 2人のドライバーで約20㎞走行する「Endurance Event」ですが、終始落ち着いた走りを見せ、2大会連続の完走を成し遂げました。
 静岡県での動的審査に先立って行われた静的審査(「Cost & Manufacturing Event」・「Presentation Event」・「Design Event」)では、それぞれ22位、33位、39位を獲得し、 動的審査と合わせて、総合25位を獲得しました。また、全ての静的・動的審査に参加し、完遂・完走しているチームに贈られる「日本自動車工業会会長賞」を受賞しました。

■新潟大学 学生フォーミュラプロジェクトNEXTホームページ
■全日本学生フォーミュラ大会ホームページ
■エンデュランス走行の様子(2:24:50頃から2:59:00まで)(YouTube)


CANSATプロジェクト

  「CANSATプロジェクト」は宇宙開発に関連する様々な競技に取り組むプロジェクトです。今年度は主に2つの大会に出場し大きな成果を挙げました。

一つ目は、2022年8月11日~19日に秋田県能代市で行われた「第18回 能代宇宙イベント」です。 昨年度に引き続き、ハイブリットロケット1機、 CanSat競技のランバック部門3機、フライバック部門1機の合計5機のマシンで参加しました。
 開催期間中は、秋田県全域を襲った大雨の影響で、大会日程の変更を余儀なくされました。通常は屋外で行うCanSat競技も、 急遽体育館の中で行うなど競技ルールの変更もありました。そのような中でも、画像処理や地磁気センサなど屋内でも使用できるセンサを、競技環境に上手く対応させ、 0mゴールを達成しました。天候が回復した大会後半は、通常通り屋外でCanSat競技が行われ、こちらもゴールから63㎝まで近づき、屋内・屋外共にランバック部門で1位を獲得することができました。 加えて協賛企業のタイプエス賞を受賞しました。
 ハイブリットロケットについては、今年度は基板の配置を見直し、昨年と同様のスペースに冗長性を持たせたシステムを搭載しました。 技術伝承もしっかりと行い、2年連続打ち上げを成功させました。パラシュート解放機構が動作せず、弾道落下になってしまいましたが、 飛行ログの回収にも成功し、253.3mの最高高度に到達しました。

 二つ目は2023年3月2日~6日に鹿児島県南種子町で行われた、「種子島ロケットコンテスト」です。種子島ロケットコンテストは、全国の学生が開発したモデルロケットやCanSatを持ち寄り、 技術やアイディアを競う大会です。ロケット部門、CanSat部門、併せて7種目に分かれており、全国の大学、高専、高校などから約400名が参加しました。
 新潟大学からは、2、3、4年生の合わせて3チームが、CanSat部門の自立制御カムバック競技、遠隔制御カムバック競技、オリジナルミッション競技にそれぞれ出場しました。 その中でも遠隔制御カムバック競技に出場した3年生チーム「HOTOGI」は、パラシュートを用いて地面に着地後、機体に搭載されたGPSによってゴール付近まで近づき、 その後、機体に搭載されたカメラで周囲の状況を撮影、インターネットを介して新潟に写真を送信。その写真をCPUパワーのあるワークステーションで解析することによりゴールを見つけ出し、 今度は新潟のPCから遠隔制御コマンドを機体に送信し、そのコマンドに従いゴールまで制御することで、見事0mゴールを達成しました。 この制御ログが認められ、遠隔制御カムバック競技で優勝することができました。
 加えて、4年生チーム「Steadiness」は、気圧センサを用いてパラシュートから空中分離するというオリジナルミッションを策定し、見事成功させることができました。 これにより、オリジナルミッション競技で3位入賞を果たすことができました。また技術的に優れたプレゼンテーションをしたチームに贈られる「ベストプレゼン賞」を受賞しました。

■新潟大学CANTATプロジェクト(NiCs)ホームページ


能代宇宙イベントでの様子


種子島ロケットコンテストでの様子

能代宇宙イベントでの様子


種子島ロケットコンテストでの様子

非産業用ロボットプロジェクト

 「非産業用(レスキュー)ロボットプロジェクト」は人が入れない災害地等で情報収集を行うレスキューロボットを製作するプロジェクトです。 災害時にレスキューロボットに必要とされる標準的な性能を試験する大会があり、それら大会への出場を目指して活動しています。
 今年度は、大会を模したステージを製作し、それらを用いて開発したレスキューロボットの動作試験を繰り返しました。大会では、 操縦者はレスキューロボットを目視して操作することができません。本番と同様の動作試験を繰り返す中で、 操縦者にとってロボットが今どのような状態にあるのか認識するための視点が少なく、カメラの増設や俯瞰カメラの必要性が判明しました。 そこで、狭所走行時には折りたたむことが可能な俯瞰カメラの設計・製作を行い、新たな視点を追加することで、ロボットの操縦が格段にしやすくなりました。
 年度後半の2023年3月4日~5日には、兵庫県神戸市で行われたテスト大会である「Robocupレスキュー実機リーグキャンプ in KOBE」に参加しました。 約4年ぶりにロボットを持参しての参加となりました。キャンプでは、実際のフィールドを模した会場で走行試験を行ったほか、 阪神淡路大震災についての震災学習、その中でレスキューロボットに求められる要素についても学習しました。遠隔操作や走行性能についてはまずまずの 結果を得たものの、マニュピュレータが必須はいくつかのステージについては参加することができませんでした。
 今後はマニュピュレータの搭載やさらなる操縦性の向上、機体・回路の安定性など、総合的にブラシュアップして、本番大会への出場を目指します。

■非産業用(レスキュー)ロボットプロジェクトホームページ


音響工学プロジェクト

 「音響工学プロジェクト」は、首掛け式で取り外ししやすい軽度難聴者向けの簡易補聴器の開発を行っています。 通常の補聴器は、価格が高く、小型で紛失しやすく、高齢者には電池交換が大変で、軽度難聴者は長時間装着しないという課題点があります。 これら課題を解決するため今年度もハードウェア班・ソフトウェア班に分かれて活動を行いました。
 ハードウェア班は音声を取り込み・処理・出力する基板の小型化、回路CADによる設計・製作と、基本となる音声入出力プログラムの開発、 基板を納めるためのシェルの製作などを行いました。特に音声出力段にオペアンプを組み込むことにより、イヤホンに安定して音声を出力することができるようになりました。 ソフトウェア班は取り込んだ音声に対してFIRフィルタによる(HFP,LPF,BPF)の実装、エコー、リバーブ、ピッチシフトなどのエフェクタ処理の実装を行いました。
今後はハードウェア班、ソフトウェア班で製作したものを合わせ、簡易補聴器のプロトタイプを製作する予定です。


理科実験教材開発プロジェクト

 理科実験教材開発プロジェクトは、主に小中学生向けに、アッと驚く、安価で楽しい理科実験教材を開発することを目的に活動しています。 昨年まではYouTubeで実験動画などを公開する活動をしていましたが、時期によっては新型コロナウィルス感染症も落ち着きを見せたことから、 2022年8月24日に新潟市内の小学校で、2022年10月29日~30日に福島県郡山市で理科実験教室を開催しました。
 どちらのイベントも理科実験教材開発プロジェクトが開発した「暗くなると光るライトキット」を教材として使用しました。 作ったライトをすぐ使えるように塩ビパイプと暗幕でつくったトンネルも用意しました。トンネルの中にお菓子やクイズを用意するなど、子供たちが楽しく実験をできるように工夫し、 来場者に好評でした。

■理科実験教材開発プロジェクトホームページ
■新潟大学理科実験教材開発プロジェクト YouTubeチャンネル


情報セキュリティプロジェクト

 情報セキュリティプロジェクトは、CTF(Capture The Flag)という競技を通じ、情報セキュリティ技術を学習することを目的とし、 その技術力の証明として、日本最大級のCTFであるSECCON CTFという大会に出場し各分野1問以上正答する、 及びSECCON CTF Beginnersという大会でで上位入賞することを目標としています。
 CTFには様々な分野があり、低レイヤ班と高レイヤ班に分かれて活動を行っています。 今年度、低レイヤ班はサーバーの乗っ取りを行う技術の学習、高レイヤ班はウェブや通信を介した情報漏洩に関する知識の学習を主に行いました。
 6月4日~6月5日にかけて行われた、SECCON Beginners CTF 2022に出場し、891チーム中153位という成績を残しました。昨年度に比べ、出題された問題をより多く解くことができるようになり、 昨年の271位という結果と比べ順位を伸ばしました。
 また、11月12日~13日にオンラインで行われたSECCON CTF 2022の予選に出場しました。情報セキュリティプロジェクトが目標としている日本最大規模の大会になります。 今年度は129ptを獲得し、726チーム中238位というまずまずの結果でした。回答できない分野もあり、各分野1問以上正答するという目標を達成できず、悔しい結果となりました。