はじめに

 新潟大学工学部海岸工学研究室では,現地調査,数値計算,水理実験に基づいて,海岸工学~大気科学に関する分野横断的な研究を行っています. 以下に紹介している(1)~(7)の研究内容は,どれも多くの国内外の研究機関と共同して行う重要な研究であり,それらに優劣はありません.

(1) 気候変動後の沿岸・流域水災害の統合評価

 気候変動後の未来における沿岸・流域水災害の被害の甚大化が懸念されており,近年では水災害が多発しています.これらの沿岸・流域水災害を統合的に評価することを試みています.

(2) 沿岸災害の発生機構の解明と社会への影響

 沿岸災害の発生機構を解明して,沿岸災害の被害拡大の要因を探ります.現地調査を行うことで,被害を受けた構造物を調査して,被災した人にインタビューを行います. さらに,数値シミュレーションを用いて,沿岸災害である津波・高潮・高波の浸水被害の程度を評価します.最近では,高解像度な浸水計算に注目しており,構造物を1軒1軒考慮した数値計算手法を開発しています.

(3) 海浜変形の計測・数値計算手法の構築

 最新のUAV(ドローン)を用いて海浜測量を行います.海浜変化の空間分布を知ることで,新潟海岸の海浜侵食に対してより有効な対策方法を考えます. 最新の技術を歴史的に海岸侵食の問題を持つ新潟海岸や河口域に適用するフィールドワーク(現地調査)を主体とした研究です.

(4) 機械学習の海岸工学への応用

 機械学習を用いて,波浪や海浜変形を高精度に予測します.近年では,機械学習が再注目されており,その予測精度も向上しています. 本研究では,従来のモデルによる予測結果と機械学習による学習を組み合わせることで,高精度な予測を可能とする手法を開発しています.(学生の提案による研究です)

(5) 水理模型実験・数値波動水槽

 2011年東日本大震災や2018年大阪湾の高潮高波災害では,港湾からコンテナが流出して被害を引き起こしました.これまで津波によるコンテナ漂流を数値波動水槽において再現することで,コンテナ漂流を高度に評価することを試みています. カナダ・オタワ大学とドイツ・ブラウンシュヴァイク工科大学との国際共同研究です.

(6) 極地(北極・南極)の温暖化影響評価

 温暖化は極地の環境に大きく影響します.特に,海氷や永久凍土の溶解による環境場の影響が注目されています.数値計算モデルを用いることで,これらの影響を評価することを試みています.

(7) 極端低気圧の熱力学的評価

 極端気象現象を数値計算モデルで再現して,その熱力学的構造を評価しています.特に,熱帯低気圧の強度の増加の原因などを熱力学な観点や総観的な規模から評価しています.豪雨のシミュレーションの高度化も行っています.