社会システム工学コースMANAGEMENT OF SOCIAL INNOVATION ENGINEERING

コースの教育目標

社会システム工学コースでは、以下の能力を育成すべく、教育プログラムを用意しています。

(A)科学と技術の成り立ちと実社会におけるそれらの役割を,広範かつ具体的に理解,分析する能力。
(B)経済活動とその基本となる人の行動原理,倫理的規範,法的制度等を包括的に理解,分析する能力。
(C)有形無形に拘わらず,現代の工学が創造する新たな価値の基本原理を理解し,様々な課題解決に適用する能力。
(D)企業をはじめとする各種組織や自治体,地域コミュニティ等の経営理論を理解し,人類の福祉向上のための具体的かつ実施可能な方策を構想,立案できる能力。
(E)実社会における潜在的課題を顕在化させ,具体的な解決策を提示できること,周囲の理解を獲得し,必要な組織を構築,運営することで解決策を実施できる能力。

授業科目一覧

技術経営プロジェクトI・Ⅱについて

教室で学んだ知識とスキルをもとに、企業等と学生、教員がチームを組んで課題解決に取り組みます。
約2年間にわたってPDCAサイクルを繰り返すことで、学生はイノベーション実践力の修得を図ると同時に、企業等においては経営力、技術力、人材育成力、ネットワークなどの総合的レベルアップが期待されます。

技術経営プロジェクトの連携先(順不同)
公益社団法人つばめいと、佐渡工業会、AGC株式会社、株式会社大橋洋食器、株式会社鈴木コーヒー、株式会社フレーム、
十日町市役所、有機化学工業製品製造業など。

実践・研究紹介

グローカル工学教育・技術協力の実践・研究 担当教員 : 上田 和孝 准教授

【グローカル工学教育分野】 国際社会の実課題を取り扱う課題解決型の産学民連携グローバル教育の実践研究 キーワード:工学教育(国際教育,課題解決型学習,連携教育)

国際社会の技術的な実課題を題材にした多文化及び学際的なチームによる,課題解決型の産学民連携教育プログラムの開発及び教育実践,並びに効果実証研究に取り組むものです。2020年度以降は,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ,オンラインツールを活用し,文化や社会,倫理などの国の違いを踏まえながら,国際的な課題解決の解決提案について海外の学生とグループ学習を行う「国際オンライン協働学習(Collaborative Online International Learning:COIL)」に関する実践研究も実施しています。 産学連携による課題解決型学習は,学習者となる学生の知識・能力の向上はもちろん,協働相手となる企業や地域産業にとっても得られる効果があります。学生・企業が共にwin-winとなる教育プログラムとするにはどうしたら良いか,実践研究により探究し,グローカルな工学教育プログラムとしてのエコシステム構築を目指します。 なお,本研究は,新潟大学工学部が実施するG-DORM事業を通じた実践研究が中心となっています。 参照:G-DORMのWebページ(https://www.eng.niigata-u.ac.jp/~g-dorm/

【グローカル技術協力分野】 途上国や災害被災地における持続可能な開発とその担い手育成に関する実践研究 キーワード:国際協力(コミュニティ開発,技術協力),社会システム工学(防災・復興)

途上国や災害被災地など,国内外で草の根の産学民連携による持続可能な開発のためのコミュニティ開発や防災・復興と,その担い手(組織や人材)の育成に関する実践研究に取り組むものです。近年は,地域運営やNPO運営に欠かせないファンドレイジングの実践にも取り組み始めました。いずれの取組も,フィールドワークや,企業・NPO/NGO等での活動参加を通して,参与観察やアンケート・インタービュー調査等を実施することにより,課題解決・改善に向けた提言を行うアクションリサーチが中心となります。持続可能な開発(Sustainable Development)の鍵となる,多様なステークホルダーの連携(ネットワーク)に着目し,グローカルな視点をもって,技術協力の実践研究に取り組みます。

デザイン思考・ライフサポート 実践・研究 担当教員 : 尾田 雅文 教授

地域企業と連携して、医療現場の要望に応える機器の開発を行なっています!

深部静脈血栓症予防装置の開発事例 医療の現場とものづくり現場のそれぞれの課題を解決するため、
新しい深部静脈血栓症予防装置を開発・試作しています。

医療現場における課題

長時間同じ姿勢を取り続けると、血管内に発生した血栓が血液で運ばれ、肺血栓塞栓症や心筋梗塞等、生命の危機に直結する症状を発症することがあります。
医療の現場では、間歇的空気圧迫装置等を用いて予防しますが、装置装着部位の蒸れやかゆみなどを訴える患者さんが存在します。

地域産業における課題

地域産業を担う企業では、特に「次の時代を担うものづくり若手人材の育成」が課題とされています。
また、地域の持続的発展のためには、「新規事業の創出」が必要であり、そのためのヒントを得たいとの要望が根強くあります。

課題解決に向けたアクション

医療の現場と地域企業双方の課題を解決するために、地域企業のものづくりチームとともに新しい深部静脈血栓症予防装置を試作しました。本装置は、足関節を持続的他動運動することで、「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎ(ヒラメ筋)を伸縮運動させます。この時、静脈内の逆流防止弁が作用し、血流改善の効果を生みます。本装置の効果は、超音波エコー装置のカラードップラー画面により確認しました。

イノベーション・エコシステム 実践・研究 担当教員 : 小浦方 格 准教授

地域における科学技術と産業のあり⽅ 〜Innovation ecosystemを完成させるmissing linkを探索する〜

社会は様々な課題を抱えています。その課題の解決にはイノベーションが⽋かせませんが、イノベーションが社会において⾃律的、継続的に創出されるためには個⼈や企業、産業界、⾃治体や国などの公的機関、⼈材育成と科学的知⾒の創出を担う⼤学等⾼等教育研究機関が相互に連携し合い、科学技術に基づいた様々な取り組みが求められます。これまで、国や⾃治体はイノベーションを⽣み出すために様々な施策を実施してきましたが、社会システムとして地域に根付いたとは決して⾔えません。つまり、産官学、個・組織と社会の連携システムに「何か」が⽋けているのです。
本研究テーマは必ずしもアカデミックな成果に結びつかないかもしれませんが、地域社会を構成するいずれかのセクター、個⼈または組織の活動に実践的に参画し、主に参与観察的⼿法を適⽤することで”missing link”を探索し、社会システムとしてイノベーション・エコシステムの実装を⽬指します。

Keywords;
Innovation, Scientific Capability, Triple Helix, Human‐resource Development, Co‐op Education, Industry‐Academia‐Government Cooperation.

マネジメント・システムデザイン 実践・研究 担当教員 : 東瀬 朗 准教授

安全⽂化診断を活⽤したハイリスク産業における
安全管理体制構築と改善に関する研究

研究の⽬的と概要

  • ●「安全⽂化診断」を活⽤し,各事業所の安全意識を可視化した上で企業全体の安全管理体制の構築及び改善を⾏う
  • ●事故・トラブル・品質異常など企業にとって望ましくない事象と従業員の意識の関連を研究し,未然防⽌ができる組織づくりを⽀援する
  • ●「望ましくない事象」につながる設備・技術⾯及び管理・運営⾯の不具合を早期検知するための⼿法を開発する

■Research topic:

Development and improvement of safety management systems in high-risk
industries by utilizing Safety Culture Survey

■Objectives and outline:

Develop and improve the safety management system of the entire company by visualizing the
safety awareness of each business site using the "Safety Culture Survey".
Study the relationship between the awareness of employees and undesirable events for thecompany, such as accidents, troubles, and quality abnormalities, and support the company toprevent undesirable events. Develop methods for early detection of deficiencies in equipment, technology, management,and operations that lead to undesirable events.

リレーションシップ・デザイン 実践・研究 担当教員 : 長尾 雅信 准教授

プレイス・ブランディングとサスティナビリティの探究

経済やテクノロジーの発展は人間の生活を豊かにする一方で,自然環境や社会に負荷を与え、その存続を危うくする側面も有しています。自然や社会の持続可能性を高めていくために,人や組織は自分たちを取り巻く環境(自然、地域社会など)とどのように付き合っていけばよいのか。私たちの研究グループでは、異分野の研究者や企業、自治体、市民組織等と協働しながら、リレーションシップ・デザイン(関係性のあり方)の探究に取り組んでいます。具体的な研究テーマとしては、プレイス・ブランディング(地域のブランド化)、CSV(Creating Shared Value:企業の経済的価値と社会的価値の両立)を取り扱っています。
プレイス・ブランディングでは、観光客等の来訪者や移住者を地域に誘引し、経済的な発展を目指すと同時に、居住者による地元愛の醸成を通じて地域コミュニティの活性化を図ることが目指されています。また、世界的に異常気象が頻発し、日本においても自然災害が多発する中で、プレイス・ブランディングは地域の防災力にも結び付いています。そのため、地域やその自然、歴史文化、ライフスタイル等をどう捉え、意味を見い出しているのか。本研究グループでは、アンケートやSNSのソーシャルリスニングによって集めた言語・画像データの解析、フィールドワークやインタビュー調査に基づいた質的分析、企業や地域の人々とのワークショップ等を組み合わせながら、その探究を進めています。そういった基礎調査をもとに、自治体や地域住民には、地域の持続的発展への政策提言をなすとともに、企業との連携では、社会課題の解決を中心に据えた製品やサービスの開発・ブランディングに取り組んでいます。
研究グループに参加する学生たちは、他の研究機関、企業、自治体などとの協働プロジェクトを通じて、課題発見力、企画立案力、コミュニケーション力を高めています。