研究内容


(1) しゃ熱コーティング材トップコートの機械的・熱的特性に及ぼす長時間高温曝露の影響

 発電用ガスタービン等の高温機器に付加されるしゃ熱コーティング材(Thermal Barrier Coatings,TBCs)において,実機における長時間運転に伴いセラミックトップコートの焼結が進行し,トップコートの機械的・熱的特性が変化する事が報告されています.このような特性変化はTBCsの性能劣化につながるため,特性変化のメカニズムおよびその変化挙動を定量的に把握し,特性変化を回避する方策を示す必要があります.そこで,長時間高温曝露に伴うトップコートのヤング率,気孔率,熱伝導率変化の評価法の確立,それらを用いた定量的評価,およびそれらの相関関係に関して検討を行っています.



(2) 拡散熱処理によるWCコーティング材の形成および機械的特性評価

 タングステン(W)は高融点かつ金属として比較的高い硬度を示しますが,炭化物化する事で高硬度・高耐摩耗性特性を有するタングステンカーバイド(WC)として利用可能となります.しかし,その特性よりWCは焼結助材としてCo等を併用した粉末冶金法によりバルク材として形成されるのが一般的であり,薄膜としての利用は進んでいません.そこで,Wシートの拡散接合およびカーボン(C)とのWC形成のための拡散熱処理による,WCコーティング材の形成を目的とし,熱処理条件の最適化,および形成されたコーティングの機械的特性評価に関して検討を進めています.

 1100℃-1 hの拡散熱処理を付与した結果,WCを含んだ反応層の形成に伴うFC200基材/Wシート間の拡散接合が確認されました.またWシート表面に蒸着したCとWによるWC表面層の形成,およびそれによる表面領域における硬さ値の明瞭な上昇が認められました.一方,硬さ値の上昇にまだばらつきがあること,およびFC200基材/Wシート間の拡散接合が不完全で一部に剥離亀裂等の発生が生じたことから,拡散接合条件の最適化,応力緩和層の挿入等による残留応力対策,等の検討が必要であることが明らかとなりました.




(3) ゾル・ゲル法およびプラズマ溶射法によるハイドロキシアパタイトコーティング材の形成および密着強度特性評価

 ハイドロキシアパタイト(HAp)は人口歯材料や骨充填材料として,また高い生体親和性からインプラント金属用コーティングとして利用が進められています.しかし,コーティングとしてのHAp利用に際しては,基材との密着強度を保証する必要があります.HApコーティング施工方法としては数多くのプロセスが検討されてきていますが,その中からゾル・ゲル法およびプラズマ溶射法の2種に着目し,それぞれにより施工したHApコーティング材における基材/コーティング間の密着強度をスクラッチ試験および各種観察・分析により評価しました.また,生体環境内保持による影響を検討するため,生理食塩水への長期間浸漬後のHApコーティング材に対しても同様の評価を行いました.

 プラズマ溶射HApコーティング材においては,溶射前(HAp粉末)と溶射後(HApコーティング表面)のX線回折結果から,溶射プロセスによりHApの熱分解により非晶質HApおよびリン酸カルシウム等の生成物が生じること,および生理食塩水浸漬後ではスクラッチ試験における臨界垂直荷重Lc値に明瞭な変化が現れること,等が明らかとなりました.熱分解に起因する生成物は結晶質HApと比較して溶解性が高いことが報告されており,生体環境下におけるHAp変質に影響を与えると考えられます.