はじめに

協議会委員長の挨拶: 丸山久一

 社会基盤施設・設備の老朽化がマスコミに取り上げられてから10年が経ちます。

 その間、既存の施設・設備の維持管理や補修・補強に関して種々の進展はあったものの、社会・経済的な理由でインフラ整備に関係する企業体や技術者の減少が進み、特に地方自治体においては思うような展開ができない状況が続いておりました。

 このような現状を鑑み、国土交通省の有識者会議では将来に対する危機的な認識を示すとともに、新たな対策を進めるための国の決断を促しました。 その結果、本年7月に国土交通省は維持修繕の省令告示を出すまでに至りました。 何が何でも既存社会基盤施設・設備を守るという覚悟を示し、それらの点検を定期的に実施することを義務付け、その結果に基づき補修・補強等の対策を行うための予算措置も確立しつつあります。

 しかし、規則ができ、予算が確保されたからといって、直ちに実行できる訳ではありません。 点検や診断を実際に行う技術者がいなければ、実態が伴いません。社会基盤施設の一つである道路橋についてみると、2m以上の橋は全国で70万橋ともそれ以上とも言われています。 それ以外にも、トンネル、上下水道、河川や海岸の堤防・防波堤、ダム、港湾、空港などのほか、砂防堰堤などの防災施設も数多くあります。それらを5年に1回とはいえ、全てを近接目視検査するだけでも、ある技術レベルを有する技術者が多数必要になります。 これまでの公共事業バッシングの影響で、社会基盤施設・設備の維持管理に十分な予算が確保されてこなかったこともあり、特に、点検・診断、補修・補強など維持管理に係わる技術者の養成がほとんどなされておらず、現時点では技術者不足が深刻な状況です。

 そのような背景を受けて、新潟県内でも長岡技術科学大学を中心として、新潟大学、長岡高等工業専門学校、国土交通省北陸地方整備局、新潟県、新潟市、新潟県建設業協会、建設コンサルタント協会北陸支部の協力を得て、新潟県ME協議会が発足しました。 MEとは、メインテナンスエキスパートの略号です。この会の目的は、社会基盤施設・設備の点検等を実施できる技術者の育成で、年2回、ME養成講座を実施いたします。 秋に行う講座は、構造物一般の点検に関するプログラム、春の講座は主として防災施設・設備の点検に関するものです。各回とも約1か月にわたり、座学と現場実習が組み込まれています。

 養成講座を終え、資格審査をパスすると協議会認定の新潟ME(構造)、新潟ME(防災)という称号が付与されます。9月から養成講座が始まりますが、最初は必ずしも多くの希望者に応える受講者数とはなりませんが、工夫をこらしてより多くの技術者を育て、社会インフラの維持管理に貢献したいと思っています。