「藍綬褒章受章にあたって」

              クリーン・テクノロジー株式会社 

代表取締役社長  西澤 和夫

このたび5月16日に藍綬褒章をいただきました。新潟大学工学部の先輩の株式会社コロナ内田社長と同時に受章できたことはさらに大変光栄に思っています。
 私がいただいた藍綬褒章の賞状の文面には「日本国天皇は西澤和夫に新規事業を起業し斯業の発展に寄与したことについて藍綬褒章を授与する」とあります。新規事業の立ち上げ育成を評価され、経済産業省から推薦を受けました。(一般にベンチャー枠と呼ぶそうです)
  5月16日の東京プリンスホテルで執り行われる褒章伝達式に臨むため、前日15日に上京し同ホテルに宿泊しました。16日は朝9時半にホテル内の会場に集合。経済産業省の大臣から授与される予定でしたが、大臣不在で次官から賞状と褒章を手渡されました。
  次いで用意された昼食をとったあと、バスで皇居に向かい、豊明殿にて消防庁ともう1つの省庁と3省庁合同で天皇陛下の拝謁を受けました。受章者約120名、同伴者同数、計240名くらいでした。天皇陛下がお出ましになるまで待つ時間のほうが、天皇が壇上でご挨拶され、ご退場されるまでの時間より長かったような気がします。
  それから玄関前で集合写真を撮り、バスに乗り、また東京プリンスホテルに戻ってきて解散となりました。緊張するかなと思っていましたが、緊張する前に終わってしまいました。しかしながら、皇居の中に入るという得難い経験ができましたので、受章に感謝すると共に今後の更なる努力を誓った次第です。

 さて、クリーン・テクノロジー株式会社の歩みおよび業態を簡単にお話します。
私は1971年3月新潟大学工学部応用化学科を卒業し、同年4月アルプス電気鰍ノ入社して2000年7月退社し、同年8月クリーン・テクノロジー鰍起業しました。社員は私と妻の2名だけでした。入居先は信濃川テクノポリスのインキュベートセンター(ベンチャー養成施設)の1室であり、私は最初の入居者でした。
  8月に起業して9月、10月と殆ど収入無し。さすがにあせりがでて、ようやく12月にスピードファム株式会社からコンサルタント依頼を受注しました。300万円で1年間の契約でしたが、「イスラエルに1週間滞在し、レーザー評価装置メーカーの技術を調べてきて欲しい」との条件付でした。
  当時既に第1次湾岸戦争が始まっており、イラクはイスラエルにミサイルを撃っていたので、日本政府は海外出張の自粛を企業に求めていました。イスラエル行きなどはもってのほかでした。しかし生活の為コンサルタント依頼を快諾(?)し、保険会社に海外旅行傷害保険をつけてくれというと、イスラエルに行くなら(多分今も同じ?)「戦争特約」が必要といわれ、確か保険料が1日1万円だったと思います。保険屋さん曰く「この特約をつけていればミサイルOK。普通の保険では保険金はでません」。
  戦争特約をつけ準備万端イスラエルに赴きました。途中中継地のイギリスのヒースロー空港では、イスラエル行きの人は特別室に入れられたうえ銃を持った兵士に囲まれ怖い思いをしました。イスラエルに到着しコンサルタントを開始しましたが、イスラエル国内の日常生活は全く平穏そのもの、1週間のコンサルタントの後無事日本に帰国することができました。
  とにもかくにも、このイスラエル出張を乗り越えた時が今日のクリーン・テクノロジーの出発点となりました。

私が経営者として気をつけたのがNEEDSSEEDSの関係です。
 よく間違えるのがSEEDSで商品開発を行ってしまい、後でNEEDS捜しを行ったが見つからなかった、というケースです。以下に述べるUV装置とHPCP装置はユーザーから作ってくれないかと持ちかけられたケースでNEEDSが先にありました。そしてNEEDSは新しい取引をもたらす運も呼び込みます。私はベンチャーが発展していくには「努力4運6」だと思います。実際運が付かないといくら努力しても駄目な時は駄目でした。
  UV装置(紫外線による洗浄装置)は、知人(新潟大学工学部の先輩)から「UV-IR装置(紫外線による洗浄を行い、赤外線加熱で乾燥)を作ってみないか」と言われて商品化しました。これが弊社が液晶業界に入るきっかけとなりました。
  次に開発したのがHPCP装置(加熱/冷却装置)で、これは弊社の主力商品です。液晶用カラーフィルター製造ラインの加熱冷却プロセスで使用されています。この装置は弊社が市場をほぼ独占しており、市場占有率は日本、台湾でほぼ100%、韓国で50%です。技術的差別化として静電気対策皮膜の開発及びヒーターの内作化により被処理ガラス基板の温度分布の精密化、多段引き出し防止機構等が挙げられます。

さて、液晶での装置産業も今がピークと思われます。弊社も次に向けて2年前から商品として「フィルムへのロールtoロールの塗布装置」の開発に取り組んでいます。これはなかなか技術的に難しいのですが、弊社は「AGGRESSIVE CHALLENGE」を会社の基本方針にしておりますので、今後もベンチャー企業として「積極的に挑戦」していきたいと思います。

最後に、今回私が藍綬褒章を戴いたのは、弊社社員の努力と母校の諸先輩や私の周りの方々の暖かいご支援の賜物と深く感謝しています。6月21日に長岡市のホテルに今までお世話になった方々をお招きして「授章記念祝賀会」を行います。その時にも感謝の気持ちをお伝えしたいと思っています。
 母校の広報に拙い文章を載せてしまいましたことをお詫びして本稿を閉じさせて頂きます。
 伝達式写真