2007夏の学校 ドイツ・マグデブルグ
    機械システム工学科4年生O君のレポート

    [ドイツでの体験]

     ドイツ文化・ライフスタイルの体験、そして技術大国ドイツでの研究施設見学。特に、海外の研究施設・工場などを見学できる機会などは滅多にあるものではなく、夏の学校は僕にとってすばらしい経験となりました。
     印象に残った訪問などを中心に記したいと思います。


  • マクデブルク大学・ドイツ語クラス

     マクデブルク大学を見て感じたことは、一般にも大きく開かれているということでした。日本の大学のように塀に囲まれた感じはなく、開放的でした。また、学内にはディスコもあって金曜夜には騒いでいる学生の声も聞こえ、日本の大学との違いを感じました。

     夏の学校では計10回、ドイツ語の授業を受けましたが、言語のみならずドイツの文化なども勉強でき、こういった機会の少ない理系の僕たちには良い機会となりました。


  • 研究施設・工場などの見学

    • ミレニアムタワー…マクデブルクにあるタワーで、エネルギー保存則・真空の実験・磁力線を視覚的に見られるなど、さまざまな原理を体験・体感できる施設。工学部の学生なら一日中楽しめるような施設でした。

    • エネコン見学…風力発電の風車を製造している会社。僕は「風力発電は騒音がひどい」と聞いたことがあったのですが、工場敷地内にある稼働中の風車の静かさに驚かされました。

      ※僕の故郷・福島県郡山市には日本最大の風力発電所・布引風力発電所があるのですが、なんとここの風車もエネコン社製でした。この事実を日本帰国後に知ったのが残念です…


  • 史跡見学

    • ベルリン…ベルリンの壁、ホロコーストモニュメントなど、いろいろと考えさせられる訪問でした。ほとんどの壁は取り壊されており、ドイツが約20年前まで分裂していたというのが信じられませんでした。

    • ライプツィヒ…恥ずかしながらライプツィヒについての知識は全くなかったのですが、この訪問でライプツィヒの歴史を知ることが出来ました。バッハが演奏したという聖トーマス教会、東西ドイツ統一活動のきっかけとなったニコライ教会。町並みも大変美しかったのが印象的でした。


  • ホームステイウィークエンド
       週末のホームステイプログラムは本当にすばらしいものでした。

       土曜日にはポツダムに連れて行ってもらいました。ポツダムと聞くと日本人は“ポツダム宣言”を真っ先に思い浮かべますが、実は世界遺産に指定された建築物・公園を多く持つ都市です。サンスーシ宮殿やツェツィーリエンホーフ宮殿(ポツダム会談を開催したところ)など、ポツダムは本当に美しく、当時の雰囲気を感じることが出来ました。

       帰宅後にはバーベキュー。日本とドイツの文化の違い、将来についてなどを家族と語り合いました。英語だけでコミュニケーションをとることに不安もあったのですが、高校レベルの語学力があれば何とかなることもわかり、楽しく話すことができました。

       日曜には村の散策。僕がお世話になったホストファミリーは500人ほどの小さな村に住んでおり、家の目の前はトウモロコシ畑。広い牧場には牛や馬もいます。日本で言えば北海道のような風景です。とても平和な光景で、家族とともにサイクリングなどを楽しみました。

       このホームステイで一番印象的だったのが、「たまねぎ」。実はバーベキュー後、蚊に刺されてくるぶしあたりが大きく腫れ、クリームをお願いしたのですが、お母さんがもってきたのは半分に切った小さなたまねぎ。「これで刺されたところをこすりなさい」と。試してみると、いつの間にかかゆみは消え跡も残りませんでした。古くからのドイツの家庭療法のようです。こんなふうに、異文化の生活様式を体験でき、そしてすばらしい家族と出会うことのできるホームステイは本当に良い経験でした。


  • 環境先進国としてのドイツ

    環境先進国と言われるドイツ。さすが、と思わせられる反面、なぜ?と思わされることもありました。

    さすがと思わされた点

    • いたるところに風力発電用風車が存在。ENERCONの風車の静かさには驚かされた
    • デポジット制度。空容器を返却すると、瓶は0.15ユーロ、ペットボトルは0.25ユーロ戻ってくる(1ユーロは07年9月時点で160円)
    • ごみの分類
    • 街角のゴミ箱の多さ
    • 自転車の使いやすさ。専用レーンがあり、快適に町を走れるようだった。
    • トラム(路面電車)の存在。帰国後に知ったことだが、マクデブルクのトラム運営会社ではカーシェアリングの試みも行っているようで、意識の高さをうかがえた。

    不思議に思った点

    • 公共用ゴミ箱・学内ゴミ箱ではごみの分類をさせていない
    • トイレには必ずといっていいほど紙のタオルがある。ヨーロッパではハンカチは若干不潔なイメージがあるらしい
    • 鉄道のシェアの低さ。鉄道は環境負荷が最も低い交通機関なのだが、環境先進国・鉄道先進国でありながら、旅客分野における鉄道のシェアはかなり低い(日本は25%を越えるがドイツは約8%。ただし欧米諸国中では高い水準である)。要因として、アウトバーン思考の強さが考えられる。何度かアウトバーンに乗り時速130km〜150kmを体験したが、乗り心地は快適だった。郊外の一般道ですら時速100kmで走れるほどの線形のよさ。線でしか移動できない鉄道よりも車のほうが使い勝手がよいことは容易に想像できた。また、ドイツの都市の分散構造も一因であると思われる。ドイツでは日本のように人口100万を越えるような都市はあまり存在せず、町が分散している。鉄道だけでのきめ細やかな輸送には限界があり、車に頼った社会構造になってしまうのかもしれない。それでも現在ヨーロッパではインターモダリティ(輸送機関の長所を生かした役割分担)の考え方が浸透し始めており、高速鉄道のICEは徐々にシェアを伸ばしつつあるようだ。


  • 鉄道

    僕は現在、鉄道工学を勉強しています。ドイツの高速鉄道ICEに乗車したり、日本の鉄道とドイツの鉄道のシステムの違いを知ることができたのも僕にとっては良い経験でした。

    • 信号システム
    • 駅の構造
    • 軌道(レール形状、架線、分岐器など)
    • 車両・編成の構造 ⇒長距離列車では日本は動力分散方式が主流だが、ヨーロッパは動力集中方式が主流である。そのほか、台車・連結器・パンタグラフ・連接車など。
    • 車内インテリア ⇒特急でも座席は回転せず、席によっては後ろ向きで乗ることになる。日本人の視点からドイツで乗った特急には必ず食堂車、コンパートメント(半個室)があった。日本の鉄道はかなりビジネスライクなものになっているが、ドイツの鉄道は移動中のゆとりも大切にしているように思われた(一方、あるドイツの人は「新幹線は座っているだけで車内販売が来るからいい」と言っていた)。ただし食堂車などの採算性は疑問。
    • きっぷ・乗車時のシステム ⇒ホームに入るのに改札がない。信用乗車といわれる方式で、不正乗車が見つかった場合高額な罰金を徴収される。日本では富山ライトレールが試みを行っている。
    • トラム・LRV(次世代型路面電車) ⇒近年、日本でも路面電車が見直されつつある。滞在したマクデブルクにはトラムがあり、市民に広く利用されていた。新型車(LRV)では乗車時の段差はほとんどなく、子供や高齢者にも利用しやすいようであった。


  • まとめ
       今回の夏の学校に参加することで、自分自身の視野を広げることができたと思います。見学先によっては分野が違うためうまく理解できないことも多かったのですが、他学科の学生と教えあうことで理解を深められました。このように、他学科の学生と触れ合ったことも良い刺激になりました。参加者の中の「高校時代からこの夏の学校に憧れていた」という学生も大いに満足していたようです。夏の学校が終了したときには「いろいろな経験ができてよかった!」とだけ思っていましたが、大事なのはその経験したものをこれからの勉強にどうやって生かしていくかです。この夏の学校で得た経験を生かしてこれからの勉強に励んでいきたいと思います。