材料科学
プログラム

材料開発の視点から人類が直面する地球規模の問題に挑む

エネルギー、食料、環境などの難題を克服し、21世紀の文明を推進して行くためには、既成概念にとらわれない新素材・新材料の開発が不可欠です。また、それらの材料開発に携わる人材として、自己啓発型の研究者や技術者が求められています。材料科学プログラムは、「原子・分子レベルからその集合体にいたる材料を対象とし、機能発現機構の解明および機能発現物質の創成に貢献できる人材を育成する」ことを基本理念としています。

プログラムの特色

物理と化学を基盤とし、材料開発を原子・分子レベルで理解できる人材を養成します。
材料開発の視点から諸問題に対応でき、将来の材料開発分野をリードする人材を養成します。
地球に優しく、人類の発展に貢献するとともに、エネルギー・環境・資源など人類が現在直面している地球規模の問題を解決するために最先端材料を開発します。

教育プログラム

プログラムの基本理念を実現するため、物理と化学を基盤としたカリキュラムを編成しています。
従来の学問分野の枠を超えて材料科学を段階的に学ぶことができます。
大学院で最先端の材料開発に関する知識・技術を修得するための基礎が築けます。

授業紹介

材料科学実験Ⅰ・Ⅱ

材料科学実験は半年間(2ターム)にわたる週2回の実験プログラムです。そこで取り上げられるのは、例えば、物質の電磁的・光学的特性、結晶の構造解析、制御系プログラムの作成、メッキ、高分子の構造解析・分解・回収、酵素、タンパク質の電気泳動、半導体デバイスと電子回路、材料試験などです。このように、物理学、化学、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、メカニクスの幅広いテーマを含み、しかも、それぞれのエキスパートの教員から指導を受けることができます。 このような多様な実験に取り組むことにより、広い視点からの科学技術の輪郭が見えてきます。その輪郭線は個々の学問分野だけを学んだのでは見えてこないもので、科学技術に関する独自の見識を獲得することができます。その独自の見識にもとづき現在の材料科学を見渡すことにより、「自分ならもっとうまくやれる」と思うものが自然に見つかるはずです。その声に素直にしたがえば、今まで思いもよらなかった材料のすばらしい可能性に気づき、誰も開発できなかった材料と新しい機能を思いつくはずです。
 このプログラムで取り上げる実験テーマは、過去に先達が成し遂げた素晴らしい研究成果ばかりです。それら大発見の追体験に数時間にわたり没頭することはある種の快感をともなうもので、将来の卓越した仕事の準備になる他、純粋に素晴らしい体験になるはずです。学生のみなさんには、これらの発見を手軽に追体験できる時代に生まれた幸運を味わいながら実り豊かな学生生活をおくり、卓越した研究者・エンジニアに成長してほしいと考えています。

シャルピー衝撃試験
直流回路の実験

プログラムの
先端研究

耐摩耗・ 高じん性タングステンカーバイドーニッケル複合硬質皮膜の開発

大木 基史准教授

 タングステンの炭化により得られるタングステンカーバイド(以下WCと表記)は、高い硬度および耐摩耗性を有することから、超硬合金工具や金型用材料として用いられています。主な成形方法として①粉末冶金法、②溶射法、のいずれかが挙げられますが、①に関してはWC結晶成長に伴う性能劣化や成形プロセスに由来する形状制約、また②に関しては粉末溶融時の脆化相形成による機械的特性低下、といったデメリットが存在します。 当研究室では、簡便で均ーな皮膜形成が可能な湿式めっき法と、脆化相を形成しない低温域(~900℃)での炭素供給・ 拡散・炭化物形成が可能なガス浸炭法を組み合わせた「湿式めっき・ガス浸炭複合法」を開発し特許を取得するとともに、このプロセスにより形成されるWC-Ni複合硬質皮膜の性能向上および形成メカニズムの解明に関する研究を行っています。 このプロセスの大きなメリットとして、めっき組成、めっき膜厚やガス浸炭条件といった施工条件を調整することで、皮膜厚さや微細組織、皮膜特性を用途に応じて最適化することが可能な点です。現時点で表面硬度は通常のWC-Co超硬合金を上回る HV2000程度まで得られており、また摩擦摩耗特性においても WC-Co超硬合金とほぼ同等の結果を示しています。加えて、皮膜密着性やじん性(き裂進展による破壊に対する抵抗、粘り強さ)にも優れていることから、金型材料や摺動部材の耐摩耗皮膜としての応用が期待されます。

湿式めっき ガス浸炭複合法によるWC-Ni硬質皮膜形成プロセス
施工条件の異なるWC-Ni硬質皮膜断面組織の電子顕微鏡画像

超伝導研究の最前線

石塚 淳助教

 皆さんは超伝導という言葉を聞いたことがありますか?超伝導は、オランダのオネスによって1911年に発見された現象です(今年は111周年の記念の年です)。彼は物質(水銀)の温度を下げていくと、ある温度で突然電気抵抗がゼロになるという驚くべき現象を発見しました。超伝導材料は医療機器のMRIにも使用されています。超伝導はどのような性質を持つのか?どのような超伝導体が存在しうるのか?これらの疑問を解き明かす学問分野が超伝導研究です。
 超伝導の基本的なメカニズムはBCS理論(1957年)によって解明され、様々な実験をうまく説明することができました。しかし、BCS理論では説明できない問題も数多く残されています。2000年代に入ると多くの面で超伝導研究が高度化していき、原子層薄膜での二次元超伝導、超高圧下での水素化物による室温超伝導など、これまでの技術では不可能だった超伝導が次々に実現していきました。これらの現代的な超伝導の謎を解明することが超伝導研究の最前線といえます。
 その潮流の一つに、トポロジカル超伝導体と呼ばれるものがあります。トポロジカル超伝導体にはマヨラナ準粒子という不思議な準粒子が現れることが知られていて、超伝導量子ビットへの応用が期待されています。また、2020年には超伝導ダイオード効果(電流をある方向に流すと超伝導を示し、逆方向に流すと有限の抵抗を示す現象)が実現し、Nature誌に掲載されました。私たちの研究室では、こういった興味深い超伝導を理論的に理解し、新たな物性を提案するため日々研究に取り組んでいます。

佐々木研究室「量子パルスでMRIに革新をもたらす」

佐々木 進准教授

 MRIの根幹技術であるNMR(核磁気共鳴法)装置を、独自に構築・改良することで、物質科学における様々な"不思議”を解明してきました。この最先端技術を活かせば「これまでにない革新的なMRIが誕生する」との着想に到り、本学の医学部の腎臓内科、脳研究所とも協力し、内閣府の全面的な支援を受けて研究を推進しています。

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