ナノテクノロジー・材料 液体中の溶質粒子はブラウン運動によって溶媒中を動き回っています。溶質粒子の動きやすさを表す拡散係数はその粒子の大きさや溶媒の粘度によって決まりますが、ナノメートルオーダーの小さい溶質粒子の場合、溶媒粒子との相互作用にも影響を受けるため、拡散係数がどのように決まるか分かっていません。 私たちはナノ粒子の拡散係数が溶媒和(水和)構造と呼ばれる粒子周りの溶媒分子の密度分布に依存することを理論的に明らかにしました。溶媒和構造は粒子間の相互作用によって決まります。現在、どのような構造が拡散係数に影響を与えるのか、構造と拡散係数の関係について詳細な研究を進めています。 拡散現象の理解は、液体中でのナノ粒子の運動の制御など新素材の開発において重要です。本研究で着目している溶媒和構造は、粒子表面を配位子で装飾するなどして変えることができます。溶媒和構造を調整することで拡散性をコントロールするという新しい技術につながっていきます。 粒子周りの溶媒分子の密度分布(動径分布関数)が分かれば、簡単な計算によって拡散係数を見積もることができます。●キーワード● 拡散係数、粒子間相互作用、溶媒和(水和)構造、タンパク質、動径分布関数Y. Nakamura, A. Yoshimori, R. Akiyama, Journal of Molecular Liquids, 200, 85-88 (2014).Y. Nakamura, A. Yoshimori, R. Akiyama, T. Yamaguchi, The Journal of Chemical Physics, 148, 124502 (2018).Y. Nakamura, A. Yoshimori, R. Akiyama, The Journal of Chemical Physics, 154, 084501 (2021).※お問い合わせは新潟大学社会連携推進機構ワンストップカウンターまでonestop@adm.niigata-u.ac.jp専門分野化学物理、生物物理、ソフトマター物理・ナノ粒子や生体分子の拡散現象に興味のある研究者、企業の方・拡散係数などの物性計測装置メーカーhttp://www.eng.niigata-u.ac.jp/~human/自然科学系 助教中村 有花 NAKAMURA Yuka関連する知的財産論文 等4-142成分溶媒中における粒子周りの溶媒の速度場。速度場は溶媒和構造によって決まり、粒子の動きやすさに影響する。研究の目的、概要、期待される効果アピールポイントつながりたい分野(産業界、自治体等)化学物理学研究室ナノ粒子の拡散係数の計算手法~ 拡散係数と溶媒和構造の関係 ~
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