「つながる研究」工学部版
38/128

環境・エネルギー 深刻化する気候変動への対策としてネガティブエミッション技術の開発が求められています。例えば、カーボンニュートラルの特性を持つバイオマスをバイオガス化して利用する際に二酸化炭素(CO2)を回収する方法や化石燃料を燃焼した際に生じるCO2を分離回収し、利用する技術などです。しかし、多くの分離媒体はCO2を回収し再生させるために100℃以上の熱を必要としています。 当研究室では、より安価かつ安全なガス分離技術の開発を目指して、室温以下の低温域でガス分離回収可能なハイドレートに着目しています。ハイドレートは図1に示すように水分子からカゴ状構造の中にガス分子を取り込んだ氷のような固体です。これを含んだスラリーを利用することでガス分離と回収プロセスを連続的に行うことができます(図2)。本手法ではイオン性添加物を取り込んだ安定なハイドレートを用いているので、大気圧でも利用できたり、雪冷熱を利用できたりするので、プロセスの省エネルギー化が期待されます。図3に示した向流接触時のプロセスシミュレーションのようにガス流量とスラリー流量を適切にすることで90%以上のCO2を回収できます。本手法におけるガス分離特性や流動特性などを研究し、より効率的なプロセスを検討しています。 温和な分離条件、小規模なプロセスで利用可能なため、分散型のエネルギーシステムであるバイオガスの有効活用や、CO2を利用した農作物増収などの地域活性にも貢献できます。H. Komatsu et. al., Chemical Engineering Science, 269, 118454 (2023).H. Komatsu et. al., Chemical Engineering Research & Design, 150, 289-298 (2019).H. Komatsu et. al., AIChE Journal, 61 (3), 992-1003 (2015).※お問い合わせは新潟大学社会連携推進機構ワンストップカウンターまでonestop@adm.niigata-u.ac.jp専門分野化学工学、物理化学、相平衡、ガス吸収●キーワード● ハイドレート、CO2分離、相転移、物質移動、スラリー流動・バイオガスの不純物を除去し、高品質化を目指している企業や自治体・園芸施設内のCO2濃度や温度、湿度を制御したい企業や自治体https://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/html/200000376_ja.html自然科学系 助教小松 博幸 KOMATSU Hiroyuki関連する知的財産論文 等2-17図1 ハイドレートの構成図3 向流接触時のガス分離プロセスのシミュレーション結果図2 CO2連続回収プロセスの概要研究の目的、概要、期待される効果アピールポイントつながりたい分野(産業界、自治体等)環境工学研究室ハイドレートを用いた循環型CO2分離回収システム ~ 室温以下での新たなガス分離技術 ~

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る