研究の目的、概要、期待される効果
タンパク質などの生体分子は、水中で固有の立体構造に「折りたたむ」ことで安定な状態を保っています. これをさらに安定化させることで、厳しい環境でも機能する酵素の開発や、構造解析が困難な創薬標的タンパク質の結晶化促進など、産業・医学・薬学の幅広い分野への活用が期待出来ます。
私たちは、生体分子の周りに「大量に存在する水分子」の物理的な意味・役割に着目して、タンパク質の安定化メカニズムを説明・予測することが可能な、独自の理論手法を開発してきました。 これまでに、100種類以上のタンパク質の天然構造予測に成功し、さらに、置換体の安定性を予測する手法1の開発を続けてきました。この手法では、水中のみならず、アルコールや疎水性溶媒、さらには生体膜中など、あらゆる「環境」の物理特性を分子レベルでモデリングして、タンパク質の安定性を高速評価することが出来ます。2 既に、幾つかのタンパク質の耐熱化に成功するなど、多くの成果を上げています。3
今後は、受容体タンパク質を安定化・不安定化するリガンドの予測や、タンパク質-タンパク質相互作用の安定化メカニズムからヒントを得た、新しいタイプの創薬技術・機能性材料の開発などへの応用・展開を目指しています。


アピールポイント
タンパク質1分子の安定性をわずか1秒未満で評価することが可能です。 にもかかわらず、理論計算に使うコンピュータは、ごく一般的なワークステーションやパソコンでもOKです。
つながりたい分野(産業界、自治体等)
・バイオ・医薬品・化学関連企業
・生体分子の活性や機能性材料の性質などを、分子レベルの知見により改善・応用することに興味のある企業、研究所、自治体等