化学システム工学プログラムが受け持つ分野は、化学製品はもちろんのこと、ナノテクノロジーや半導体などで必要とされる各種の材料、エネルギー資源、食品、医薬・化粧品、環境など多岐にわたっています。いずれの分野でも視野の広い化学・化学技術のスペシャリストが望まれています。
本プログラムでは、このような研究者、技術者を養成するために、ものの本質を見極める「化学」を基礎として、あらゆる分野で必要とされる物質開発に化学を応用する創造力、その成果を実生活に生かす化学技術まで幅広い教育と研究を行っています。
暮らしを豊かにする化学
物質の本質を見極める力
化学を応用する創造力
夢を実現する化学技術
これらを身に付けて社会の発展に貢献できる「エンジニアリングセンスをもった応用化学者」、「ケミカルマインドを持った化学技術者」、さらにこれを基点として将来自己の能力を伸ばして展開できる人材を養成します。
プログラムの特色

教育プログラム
化学が関連する分野で社会に貢献するために必要な幅広い基盤と高い専門性を持つ人材を養成するために、化学システム工学プログラムの教育カリキュラムは、KI J phase 1とKI J phase2 から構成されています。
KIJ phase l (Knowing Is J oy/学ぶことは楽しみ):
入学から2年次第1学期までは主に、化学研究者・化学技術者としての基盤を身につけます。具体的には、政治経済情勢を理解する能力、コミュニケーション能力、化学研究者・化学技術者としての役割と責任を認識する能力、自然科学の知識を用いて問題を解決する能力を養います。このための科目として、教養科目、工学基礎科目、化学科目、化学技術基盤科目があります。
KIJ phase 2 (Knowledge Integration for Professional J ob/専門職の資格を得るために知識を統合すること):
2年次第2学期から応用化学コースと化学工学コースに分かれて、高度な専門的知識や技能を身につけて専門的問題を解決するための能力を養成します。応用化学コースでは、新物質•新素材の設計・合成ならびに分析のための能力を養います。化学工学コースでは、材料の開発から生産、環境保全に関する要素技術、単位操作ならびにシステム開発の能力を養います。両コースとも専門知識の活用能力を高めるために、専門科目に密接に対応した実践科目を充実させています。さらに卒業研修、卒業研究では専門知識を統合して、社会的に重要な課題を総合的に解決するための能力を養います。
化学システム工学プログラムでは、教育プログラムが日本技術者教育認定機構(JABEE) により認定を受けており、卒業時にJ ABEE認定プログラム修了証明書が授与されます。プログラム修了生は、技術士第一次試験が免除され、技術士補として登録することができます。JABEE認定は2028年3月卒業生までが対象です。

授業紹介
有機変換化学
有機化合物を化学的に合成するための反応(有機合成反応)をその原理(反応機構)に基づき学びます。学んだ専門知識は、医薬品の薬効成分や有機太陽電池の導電性素材など高度な機能を有する様々な有機化合物の設計や製造に応用することができます。

反応工学Ⅱ
化学工業において製品を効率よく生産するためには最適な反応装置および条件で生産する必要があります。反応工学Ⅱでは反応装置内の温度変化や混合状態などを解析して最適な反応装置を設計および操作する方法を学びます。また、実践科目の化学工学実験Ⅱを通して、反応工学Ⅱなどの化学工学に関する講義で学んだ知識の理解を深めるとともに応用する能力を習得します。

拡散操作Ⅰ
異なる物質間でのある成分や熱の移動を拡散といいます。拡散を利用した操作は、化学工業において重要な位置を占めています。拡散操作Iでは特に原料から不純物を除去したり、目的物を濃縮したりするような分離や濃縮の原理を理解します。そして、その原理をそれぞれの操作に適用することによって得られる関係式を用いて装置の形状や大きさ、操作条件を決定する方法を学びます。

プログラムの
先端研究
光や電気がかかわるセラミックスの開発

化学技術は、現代社会のさまざまな分野で欠かせない役割を果たしています。私たちの研究室では、新しい機能性無機材料、特にセラミックス材料の開発に取り組んでいます。セラミソクスと聞くと、食器や窓ガラスを思い浮かべるかもしれませんが、私たちが扱っているのは、光や電気などに関わる機能性セラミックスです。これらは電子機器、エネルギー、建材など、さまざまな分野で活用されています。
光に関連するセラミックスとして、LED照明やディスプレイに使われる蛍光体が挙げられます。蛍光体とは、吸収したエネルギーを別の波長の光として放出する材料です(図1) 。当研究室では、より自然な光色や高い発光効率を実現するため、結晶構造や組成に工夫を加えた新しい蛍光体を開発しています。近年は農学部と連携し、桃などの渋味を非破壊で判定する近赤外分光法の実現に向け、近赤外に発光する材料の探索も進めています。また、無機顧料の開発にも取り組んでいます。無機顔料は建材や化粧品、文房具などに使われ、色彩の美しさだけでなく、耐久性や遮熱性といった機能も求められます。当研究室では、有害元素を使わず、耐久性が高く鮮やかな発色を持つ顔料や、高遮熱性を備えた新機能顔料の開発を進めています。最近では、学生の研究成果が特許出願されました(図2) 。
さらに、次世代のエネルギー技術として注目されている全固体電池の中核材料である固体電解質の開発にも取り組んでいます。イオンの移動を促進するような結晶構造を設計し、より高性能な材料の創出を目指しています。この過程では、分子動力学計算というコンピュータシミュレーションを活用し、材料中でのイオンの振る舞いや安定性を事前に予測しています。実験と理論を組み合わせた効率的な材料探索を行うことで開発スピードと精度の向上を図っています(図3) 。
セラミックス材料の特性は、どの元素をどのように組み合わせ、原子がどう並んでいるか、すなわち結晶構造に強く依存します。当研究室では、X線回折などの分析手法を用いて結晶構造を詳細に解析し、その構造と物性の関係を明らかにすることで、新しい材料の設計指針を確立しています。以上のように、私たちは、未来社会に必要とされる材料や機能を見据え、無機材料の研究に日々取り組んでいます。研究成果は、国内外の学会や論文で発表するとともに、優れた成果については特許出願も積極的に行っています。



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