卒業生の声
Graduate Voices

土木構造物の設計を通して自分の考えや構想を具体化できる仕事
問題解決能力の高い土木技術者を目指したい


藤生 孝典さん
日本工営(株)札幌支店 技術第一部課長補佐。
平成20年3月建設学科社会基盤工学コース卒業、平成22年3月新潟大学大学院博士前期課程を修了。同年4月に日本工営(株)に入社され、 コンサルタント国内事業本部 交通運輸事業部 空港港湾部 空港グループに配属。その後札幌支店 技術第一部 空港グループに異動され、現在に至る。
(聞き手 紅露一寛教授)

土木工学のすそ野の広さに驚き、ますます興味を持ちました 

今日は新潟大学の卒業生であり、現在日本工営(株)でご活躍の藤生孝典さんにお話を伺いたいと思います。
まずは、高校から大学にかけて,大学で土木工学を学び土木技術者になろうと思った経緯をお聞かせください。

藤生:昔からものづくりが好きで、高校生くらいのころからは、将来道路や橋などの生活を支え豊かにする構造物に関する勉強をして、それを仕事にできたらいいな、と思っていました。

昔からものづくりが好きで、高校生くらいのころからは、将来道路や橋などの生活を支え豊かにする構造物に関する勉強をして、それを仕事にできたらいいな、と思っていました。
それでは、わりと早い時期から将来は土木工学の技術者になることをイメージしていたのですね。

藤生:はい。

それでは、新潟大学で土木を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。

藤生:新潟自体が、出身の群馬県から比較的近く、地域としてなじみがあったので、進学先として考えました。 また、高校生の頃には建築と土木の違いが自分の中ではっきりできていなかったところもあり、新潟大学では1年生のときに両方の勉強ができることも自分にとって良い点でした。

土木のことを学ぶ前の高校生の頃と、土木を実際に学び始めた大学生の頃とでは、土木工学や土木技術についての印象や興味、考え方などに変化はありましたか?

藤生:大学に入学し、授業で先生方から土木工学に関する話を聞いて、その専門分野としての裾野の広さに驚いたことを今でもよく覚えています。技術の「かたち」や社会との関わりを考えると、専門知識の理解のためには物理学や化学、文化、歴史などへの知識や理解が必要になりそうと感じて大変そうだとも思いましたが、不安よりも土木工学や土木技術に対する興味の方が大きかったですね.

学生時代の一番の思い出は、やはり「研究」です 

大学生時代の学業で面白かったことや印象に残っていることなどを教えてください。

藤生:地盤工学や応用力学、コンクリートなどの実験と、そのレポート作成が特に印象に残っています。同級生の仲間と協力して実験をして、うまくいったりいかなかったりだったので結果の考察には苦労しましたが、一つ一つがとても面白かったし、自分にとって有意義な経験になったと思います。

学生時代は、学業以外に部活動やサークル活動、ボランティア活動などの課外活動に取り組まれていたことがありましたら、教えてください。

藤生:私は高校時代に野球部に所属していたこともあり、大学時代は準硬式野球部に所属していました。学友会に属する運動部でしたがそれほどハードな活動ではなく、野球好きが集まって楽しく活動している感じで、居心地が良かったです(笑)。

藤生さんは4年間の学業を終えた後、そのまま大学院の修士課程に進学されていますが、その理由を教えていただけますか?

藤生:実を言うと、4年で卒業して就職することもちょっと考えたこともありまして...(苦笑)。会社説明会に参加するなど、その時は少しだけ就職活動をしたのですが、改めて考えてみると、「自分の土木工学に関する専門知識の量と質は十分か???」と思えてきたのを覚えています。4年生になると研究室に配属されるのですが、卒業研究の指導教員や研究室の先輩の話を聞いていると、応用力学についてもっと勉強し、研究も頑張ってみたいと思うようになってきたので、大学院へ進学することを決めました。

大学院での2年間の生活で、(特に学業・研究について)印象に残っていることや今でも役立っていることがありましたら、教えてください。

藤生:やはり,「研究」ですね.私の研究テーマは、音場を対象としたトポロジー・形状最適化手法の開発とその鉄道騒音対策工への応用だったので、大学院の2年間では、解析理論を勉強し、それをもとに解析のプログラムを自分で作り、コンピュータを使って解析計算し、得られた結果を整理し、研究室のゼミ(成果報告会)で報告・発表して、先生から指導を受けて、さらに検討を加える...という研究生活を送っていました。このプロセスは、今の仕事とほとんど同じ流れでしたので、建設コンサルタントである今の会社に就職して仕事をする際に、スムーズに取り組むことができた一因になったと思っています。また、応用力学では固体も流体も統一した枠組みの下で力学現象を捉えることもあって、固体の変形や流体の運動に関する基本的な現象を把握する力が研究室での3年間で身についたと思います。実は、社内でも「土木工学の基礎知識をしっかり身につけている」という評価を受けています(笑).

人の命を預かる「空港舗装」の調査・設計の仕事にはやりがいを感じます 

ところで、藤生さんは大学院修了後、建設コンサルタントである日本工営(株)に入社されたわけですが、就職先に今の会社を選んだ理由を教えてください。

藤生:大学院の修了を控えて、改めて就職先を考えてみた時、将来は土木構造物の設計業務に携わって、「構造物の設計」という形で自分の考えや構想を実物のものにしてみたい、という気持ちが大きくなりました。その夢を実現するためには建設コンサルタントに勤務するのが一番良いと考えました。具体的に会社を選ぶ際には、広い視野で仕事ができることを重視して、総合コンサルタントである今の会社を受けることに決めました。研究室の先生方も応援してくれました。

現在のお仕事の内容について、簡単に教えてください。

藤生:現在の職場では、空港施設の調査・計画・設計業務を行なっています。3年前に札幌支店に赴任しまして、以来、国や北海道の業務を受注して、北海道内の空港整備に関する業務を中心に担当しています。空港整備に関する仕事の中では、滑走路や誘導路の舗装の改良設計や、空港の拡張整備の設計が多いですね。

これまでのお仕事の中で、特に面白かったことややりがいを感じたこと、印象に残っているエピソードなどがあれば教えてください。

藤生:皆さんもご存じだと思いますが、空港の滑走路や誘導路の「舗装」を健全な状態に保つことは、航空機の安全な離着陸のためには本当に大切です。今赴任している北海道は冬の寒さが国内でも特に厳しく、滑走路などの舗装の中の「水」が外気の冷え込みによって(夜間に)凍結し,日中の気温の上昇によって凍結した水が再び融け出すことを繰り返す「凍結融解作用」を受けます。水は凍結して固体になると、液体の水の時の容積よりも一割ほど増しますが、舗装の材料は氷のようにはいかないので、凍結して体積が膨張する際に舗装の内部を損傷させます。これまでの仕事の中では、凍結融解作用による舗装の損傷具合を目視(目で見て点検すること)や打音検査(専用のハンマーでたたいた時の音の変化で損傷具合を調べる検査)などで調べる業務を担当したことが特に印象に残っています。車載式のサーモグラフィーカメラを使用する調査を提案し実際にやってみて、最終的には空港の管理者に舗装の改良方法まで提案することができました。この業務を担当していた時には、調査方法の検討などにいろいろと苦労したのですが、調査結果をもとに損傷の発生メカニズムを概ね把握することができ、損傷が再発しにくい改良設計につなげることができたので、達成感が大きかったです。

この先、一人の土木技術者として取り組んでみたいお仕事や、今後勉強したいことはありますか?

藤生:わが国では2020年の東京オリンピック開催を控えており、また、国をあげて「観光立国」の取り組みもあります。日本を訪れる観光客の大多数は空港を利用しますので、空港の機能を拡張して旅客需要に応える事業が進み始めています。この先、空港の拡張整備の大規模プロジェクトに携わってみたいと思っています。建設コンサルタントの仕事は、調査結果の分析や構造物の具体的な設計、といった形で土木技術者としての「技術的なこたえ」を示すことにありますので、今後は、技術的な課題の多い事案や特異な条件下での設計などに向けて、柔軟な発想や技術的検討ができ、本質をしっかりおさえた技術的アプローチが提案できる、「問題解決能力」の高い土木技術者になりたいと考えています。そのために仕事を通して日々勉強ですね(笑)。

最後に、これから土木技術者を目指す在学生や高校生に向けてメッセージをお願いします。

藤生:今の(エンジニアとしての)毎日を考えると、学生の頃の学業に集中できる期間というのは、とてもかけがえのない時間だったと思います。大学や高校で学ぶ皆さんには、将来やりたいことを見つけて、自分の知的好奇心を大切にしながら、日々の勉強にしっかり取り組んでほしいと思います。

ありがとうございました。

所属、敬称などの掲載内容は2016年5月のインタビュー時のものです。