どんな人が福祉人間工学科に向いている?教員のコメント

教授

どんな学生が欲しいかっていうと,人間とか人間が作った社会とか人間が作った文化とかに対して常に興味を持ち続けることができる学生がいいですね.さらに,物を作るという,何らかの形でものづくりをするような,物に興味を持っていて,さらに,人間も面白い,人間が集まった社会も面白い,人間が作った文化も面白いと思える人はぜひとも本学科に来てほしい.

福祉工学の究極の姿は色々な社会現象まで含めてシステム的にモデリングすることだと思います.「ものづくり」だけじゃなく,「人」,「社会」,「文化」っていうのは,私はキーワードだと思うんですけど,それらに対して興味を持ち,工学的手法で,システム的な考え方でそれらを表現し,重要な部分を抽出し,抽出した結果から予測すれば,思った以上に色々なことができる.だから,車椅子の設計だけではないですよ.日本の福祉とは何か?何をやれば福祉社会になるのか?といった,従来のアプローチで要素を箇条書きするだけでなく,我々はもう少し理数的なやり方でモデリングできるんじゃないかと考えています.そうすれば,こういうのが福祉社会で,こういうところにお金を使って,こうやれば今よりもいい社会ができるとか,そういう議論も可能になるんですね.

もっと言えば,人間一人の幸せって何か?どういう人生を送ればその人は幸せなんだろうか?という議論も同じようにできるかもしれないですよ.便利って何?何をすれば便利な生活なのか?豊かな生活?我々は今まで豊かな生活を求めて,第2次大戦後,皆がんばって,物的には豊かになりましたよね.だけど,まだ2万人以上の人が自殺する社会なんです.果たして物が豊かになった社会って本当に豊かな社会なのか?って聞かれたときに誰も答えられないんじゃないかと思います.そういうことも我々考えてもいいんですよ.障害者の役に立つような道具を作るのも福祉工学だし,では本当の福祉社会って何ぞやってことを考えて提案していくのも福祉工学かもしれませんよね.そうなったときにここに来るヒトの資質としては,やっぱり,人間,社会,人間の創った文化,ある意味では宗教すらも含めでも構わないと思うんです.そういうものに関心がある学生にぜひとも入学して欲しいと思っています.

准教授

楽しめる,あるいは楽しいと思ってくれる学生,それは何かというと,自分だけ楽しいんじゃなくて,周囲を巻き込んでしまう楽しさを持っている学生は是非とも入学して欲しいなぁと思います.

楽しむって,実は一人では楽しめないんですよね.だから,楽しむときは周囲を巻き込まなきゃ楽しくない.教員が,楽しくやっていて,元気良くやっていれば,学生もきっと楽しいだろうっていうのが私の信念です.だから,新潟大学の学生が大人しいとか,元気がないって言われるとすれば,それは学生のせいじゃなくて教員のせいだと思っています.だから,教員が自ら楽しんで,自ら巻き込んで,自ら楽しい雰囲気を作り上げれば当然学生も楽しくなるし,学生もそれに倣って楽しくやってくれるんじゃないかなと思っています.これが,求めるひとつの人物像です.

もうひとつは,私の出身学部は,理学部と工学部が融合した学部なんですが,サイエンスの結果をエンジニアリングに応用しよう,あるいは,エンジニアリングの手法を使ってサイエンスに貢献しようという2つの試みがなされた学部で,その中でも,人間をひとつのシステムとして捉え,理解する,人間を知れば,人間や人間を取り巻く環境をいかに制御できるかっていうことも分かるという学科を卒業しました.制御方法が分かれば人に役立つシステムも作れるだろう,という流れで,現在,私は研究を進めています.だから,あくなき探究心というのはおかしいかも知れませんが,人ってなんだろう?自分を取り巻く環境ってなんだろう?ってことに常に興味を持っているような学生は本学科にとって必要な人物かなと思っています.

本学科では,心理学から医学まで使っている状況なので,それに興味を持っている学生にとっては,すごくいい学科じゃないかなぁって思っております.ただし,興味を持つだけでは不十分で,実際に行動に移すってことが重要です.これには,すごく大きな勇気と決断が要るんですね.研究って,行った先にゴールがあるかどうか分からないんですが,分からないのにそれをやり始めて,しかも周りの人たちに自分がやっている研究を理解してもらえるかどうかも分からない状況の中でやるときの孤独感と勇気ってすごいんですよ.ものすごい決断力が必要なのね.これは実際やってみないと分からないかもしれないですが,そういう孤独感に耐えられる学生であってほしい.